研究課題/領域番号 |
20H03241
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今見 考志 京都大学, 薬学研究科, 特定研究員 (30528344)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 翻訳 / リボソーム / 新生鎖 / ピューロマイシン / 共翻訳修飾 / アセチル化 / リン酸化 |
研究実績の概要 |
これまでの生化学では細胞内の総タンパク質を対象として翻訳後修飾を調べることが主流であった。一方、翻訳途中の新生ポリペプチド鎖を単離して、共翻訳修飾を系統的かつ大規模に解析する技術は存在しない。本研究課題では、共翻訳修飾を解析するための新規プロテオミク基盤技術を開発し、プロテオームワイドに共翻訳修飾を同定し特徴づけることを目的としている。この目的を達成するために、本年度は申請者が独自に開発した新生ポリペプチド鎖濃縮法と種々の生化学濃縮技術を用いて、共翻訳修飾の大規模同定を試みた。その結果、新生ポリペプチド鎖の約300種のN末端アセチル化を捉えることに成功した。また、アセチル化のみならず、新生ポリペプチド鎖のリン酸化や脂質修飾(Nミリストイル化)も同定している。さらに、ヒストンH1.5の新生鎖は様々な修飾とその組み合わせのプロテオフォームが存在し、異なる相互作用タンパク質によってそれらの動態が制御されうることを明らかにした。以上の成果は、現在論文投稿中であり、プレプリントとして世界に公開にしている(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.09.22.461445v2)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新生ポリペプチド鎖濃縮技術と修飾ペプチド濃縮のための生化学技術を組み合わせることで、本研究課題の目的とコンセプトは実証できたと考えている。また、修飾種の有無・組み合わせによって結合タンパク質が異なることからも、共翻訳修飾がプロテオスタシスを制御する重要な機構であることを示唆できた。さらに、これらの成果を国際学術誌に論文として投稿できている。一方で、本法の弱点もみえてきた。本解析ワークフローで同定した修飾種・数は限られており、まだまだ高深度解析は実現できていない。また共翻訳修飾の情報学的解析や機能解析に着手するためにも、本法の高感度を目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、共翻訳修飾の高深度解析を実現するために手法の高感度化を目指す。具体的には、タンデムマスタグ(TMT)を用いたペプチドのバーコーディング化によるBoosting技術を組み合わせることで、様々な修飾を包括的に捉える。また翻訳中と翻訳後修飾を定量的に区別するための技術も確立する。以上の技術を高度化することで、共翻訳修飾の情報学的解析や機能解析につなげていきたい。
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