研究課題
本年度はpSNAP法(Uchiyama et al., iScience 2022)と種々の生化学濃縮技術を組み合わせることで、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化などの共翻訳修飾を系統的に同定し、新生鎖に起きる修飾の全貌を明らかにすることを目的とした。まず、N末端濃縮技術(Chang CH et al. Mol Cell Proteomics. 2021)を改良し、簡便なピペットチップ型のN末端濃縮法を確立した。これにより、low inputの新生鎖濃縮サンプルにも適用可能な高感度N末端アセチル化ペプチドの濃縮が可能となった(Morikawa et al., in prep.)。また、液液抽出を用いた共翻訳的に起こるN末端ミリストイル化ペプチド濃縮法も開発した(Tsumagari et al., submitted)。さらにリン酸化に関しては、100種以上の共翻訳的なリン酸化部位を同定し、そのうちヒストンH1.5のN末端ではアセチル化とリン酸化が共存することを見出した。興味深いことに、アセチル化ペプチドフォームとアセチル化・リン酸化ペプチドフォーム、未修飾フォームでは結合するタンパク質種が異なっていた。これらの結合相手をさらに解析すると、共翻訳的な修飾種によってタンパク質の安定化や分解を制御しうる可能性を見出した。今後、本手法をさらに発展させ、共翻訳的な修飾の高深度解析とその機能的意義の解明に取り組んでいく予定である。
2: おおむね順調に進展している
様々な修飾種を捉える生化学的技術を順調に開発できている。一方で、共翻訳修飾の高深度解析についてはまだ検討中であり、来年度に実現したい。
共翻訳修飾の高深度解析を実現するにあたり、plexDIAと呼ばれる安定同位体標識とデータ非依存的解析法を組み合わせた技術に着手している。この方法を用いることで多量のライセートから濃縮したサンプルをブースティング試料として微量の新生鎖サンプルにスパイクインすることができ、高感度解析が可能になるのではないかと考えている。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
Journal of Biological Chemistry
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