細胞内のタンパク質の発現量には適切な量があり、その量から逸脱して過剰発現すると、細胞機能に悪影響を及ぼす。私たちは出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)をモデル真核生物として、過剰発現により増殖阻害を引き起こす限界発現量を調査でき、またその際の細胞の生理状態を調査できる「遺伝子つなひき法」を独自に開発し、さまざまなタンパク質の過剰発現による増殖阻害のメカニズムを調査してきた。これまでに大きく4つのメカニズムを提唱しているが、どのようなタンパク質の過剰がこれらのどのメカニズムで増殖阻害を起こすのかはほとんど未解明である。本研究では、これまで遺伝子つなひき法で明らかになってきた、特定のタンパク質に対して体系的に変異を導入することで、増殖阻害の度合いがどのように変化するのか、またその際に細胞にどのような生理現象の違いが起きるのかを解析することを目的とした。その結果、モデルタンパク質において、特定のアミノ酸配列を付加するような変異では毒性が大幅に増加したり、逆に減少する事が分かった。さらに、別の変異の導入により毒性が大幅に減少し、これまでにしられていないほど「無害な」タンパク質を作ることができた。今後の研究では、その変異がどんな状態の変化を起こすことで無害さを実現しているのかを調査していく予定である。
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