研究課題/領域番号 |
20H03247
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丹羽 伸介 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (30714985)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | KIF1A / UNC-104 / 線虫 / キネシン / 軸索輸送 / シナプス / KAND |
研究実績の概要 |
顕性変異で運動神経疾患および脳神経疾患を引き起こすKIF1AのP305L変異について解析を実施した。線虫ではunc-104という遺伝子がKIF1Aのオルソログである。私たちは健常人由来のヒトKIF1Aの過剰発現はunc-104をレスキューすることができることを既に示している。P305L変異を持つKIF1Aを線虫に導入したところ、線虫をレスキューできないことがわかった。次にP305L変異を持つKIF1Aを昆虫細胞で発現して精製したものをもちいて、運動解析を行った。P305L変異を持つKIF1Aは微小管への結合が極端に低下していることがわかった。 線虫のunc-104変異体をレスキューする実験系に加えて、ゲノム編集によりP305L、R11Q、R254Qに相同な変異を持つ線虫を作製する実験を実施した。変異体線虫は運動能力が低下することがわかった。線虫のシナプスを観察すると、シナプス小胞が正常に軸索まで輸送されていなかった。また、野生型線虫にこれら疾患変異を持つUNC-104を過剰発現するとシナプス小胞の軸索輸送が減少することがわかった。一方で、健常人型KIF1Aと疾患変異型KIF1Aのヘテロ2量体を作製することにも成功した。このヘテロ2量体は健常人型KIF1Aよりも運動能力が低下していた。以上のことから、疾患変異は2重の意味でドミナントネガティブの機能を持つことがわかった。一つ目は複数分子の協調運動を阻害することによる阻害である。もう一つはヘテロ2量体を形成することによるモータータンパク質の運動阻害である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
KIF1Aの疾患変異について1分子レベルの運動解析をした結果とゲノム編集により作製したKIF1Aを原因とする神経疾患疾患のモデル線虫を解析した論文が完成し、現在査読中である(Anazawa and Kita et al., Biorxiv)。3種類ある疾患モデル線虫のうち2種類で、サプレッサー変異の単離にも成功している。 KIF1Aの特色を調べるための比較対象として解析をはじめた線虫のキネシンが過去に報告されていない特異な性質を持つことがわかってきた。また、複数のKIF1Aの協調運動を解析するためにDNAオリガミを用いた系を立ち上げ、新しい方法論の開発をすることにも成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画より速いペースでKIF1A疾患モデルのサプレッサーを多数単離することができているため、今後はこれらの解析に力を入れる予定である。
|