研究課題/領域番号 |
20H03249
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
板倉 英祐 千葉大学, 大学院理学研究院, 助教 (90754218)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シャペロン / 細胞外異常タンパク質 / タンパク質分解 |
研究実績の概要 |
ほ乳類の血液などの体液はタンパク質が潤沢に循環している。しかしその品質管理機構はよくわかっていなかった。申請者は細胞外シャペロンが細胞外の変性タンパク質を選択的に捉え、細胞が取込み分解する経路があることを発見した。本課題ではこの分解経路の哺乳類における生理的重要性の解明を主に進めることで、細胞外タンパク質分解の生理的役割を解き明かし、細胞外タンパク質恒常性システムとして、世界に先駆けた新規分野の確立を進める。 本年度は細胞外異常タンパク質を分解へ導く細胞外シャペロンの新規同定を行った。これまで3種類しか細胞外シャペロンは知られておらず、その多様性は不明である。 血漿タンパク質から疎水性タンパク質群を分離・精製し、タンパク質を網羅的に質量分析同定した。その結果、多くのタンパク質が同定された。この中から異常タンパク質を分解へ導く細胞外シャペロンを同定するため、機能未知のタンパク質に絞り10個程度のタンパク質を選定した。それらタンパク質をクローニングし、ほ乳類培養細胞から分泌タンパク質として培養上清として回収後、タンパク質精製した。候補タンパク質と異常タンパク質モデルを用いて細胞取込みアッセイを行って分解活性を調べた。その結果、3種類の候補タンパク質において分解活性が検出された。これらの基質選択性に違いがあることも示された。これらのことから、その3種は新規細胞外シャペロンである可能性が高いことがわかった。この詳細を機能解析することで、ほ乳類血中タンパク質品質管理の生理的役割の解明が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血漿タンパク質から疎水性タンパク質を網羅的に同定した結果、多くのタンパク質が同定された。これらのタンパク質の多くは細胞外シャペロンとは異なると考えられるが、すでに機能がよく知られているものは除外できる。そのため、機能不明なタンパク質10個程度に着目し、それらすべてをクローニング、当研究室独自の方法によって ほ乳類培養細胞上清から分泌タンパク質として精製して、細胞外異常タンパク質分解活性があるかどうか調べた。その結果、期待よりも多く3種類同定することに成功した。さらなる詳細な解析によって、予想よりも大きな細胞外タンパク質分解システムの多様性を明らかにできると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
同定したそれぞれの新規細胞外シャペロンの機能の詳細を調べることで、細胞外タンパク質分解の生理的役割をさらに深く調べていく。それぞれのシャペロンの基質指向性や、内在性血中結合タンパク質、疎水性指向性などを調べ、細胞外シャペロン間の基質選択性の違いを探索する。さらに疾患原因タンパク質として知られている凝集体性タンパク質との結合を調べることで、疾患との関連を明らかにする。疾患との関連が見込まれる場合は、疾患モデルマウスを用いて、細胞外シャペロンによる治療効果などを検討する。これらの実験により、細胞外シャペロンによる細胞外タンパク質分解の生理的重要性の解明を目指す。
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