研究課題
ほ乳類の血液などの体液はタンパク質が潤沢に循環している。しかしその品質管理機構はよくわかっていなかった。申請者は細胞外シャペロンが細胞外の変性タンパク質を選択的に捉え、細胞が取込み分解する経路があることを発見した。本課題ではこの分解経路の哺乳類における生理的重要性の解明を主に進めることで、細胞外タンパク質分解の生理的役割を解き明かし、細胞外タンパク質恒常性システムとして、世界に先駆けた新規分野の確立を進める。本年度は、昨年度同定した3種の新規細胞外シャペロンの解析を続けた。その結果、それらシャペロンは疾患関連異常タンパク質にも、取込み分解能を示した。複数の疾患関連異常タンパク質を検討したところ、3種それぞれである程度異なる分解活性をもつことから、指向性が異なった。さらに、マウスによるvivoでの機能を調べるために、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)の立ち上げを行った。培養細胞をベースにAAVを過剰発現するベクターを構築し、プロモーター、pA, WPREを最短にし、3000bp長の遺伝子を発現できるベクターを作成した。マウスへ投与したところ、感染性を確認できた。今後、新規細胞外シャペロンの培養細胞を用いた機能解析と、マウスin vivoでの両方面から解析を進める。また、細胞内タンパク質品質管理経路にも着目し、アクチンストレスによる細胞内シャペロニン複合体のオートファジー分解経路を発見した。さらにミトコンドリアの品質管理経路を明らかにすべく、ミトコンドリアストレスセンサーの開発にも成功した。これらの成果を、各自とりまとめ、国際誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
新規細胞外シャペロンの3種タンパク質の機能的特徴づけを進めた。しかし、モデル基質とする疾患関連異常タンパク質は、タンパク質精製工程にて凝集体化する恐れがあり、扱いが容易ではなく、精製条件を決定するために時間を要した。最終的に、変性状態を保ったまま精製する条件を決定することができ、使用時に変性バッファーを数百倍希釈することで、変性状態から凝集環境へのシャペロンの関係を調べることができるようになった。今後、同条件を用いて、様々な異常タンパク質との関連を調べ、積み上げていくことが可能である。
これまでの結果を統括すると、3種の新規細胞外シャペロンと、変性状態を保った異常タンパク質を精製することができ、実験マテリアルが出そろった。今後様々な条件を可変的に構築しながら、培養細胞を用いたin vitro実験による取込み分解活性や選択性、AAVとマウスを用いたin vivo実験による生理的環境下の機能解析など幅広い実験を進めていく。培養細胞を用いたin vitro実験では、それぞれの基質指向性のみだけでなく、結合ドメインや、関連ファミリータンパク質の機能性を調べ、機能・ドメイン・分解活性の関係を絞り上げていく。また、さらに3種の新規細胞外シャペロン以外にも、さらに新しいシャペロンを同定するための、変性を可変できる基質タンパク質を共有結合したビーズを作成に成功した。研究の土台を拡張するために、さらなる変性タンパク質結合タンパク質の質量分析同定から、あらたな細胞外シャペロンの同定にもチャレンジする。AAVを用いたマウス実験を進展され、3種新規細胞外シャペロンの生理的活性評価を行う。これらの実験を進めることで、細胞外タンパク質品質管理経路の意義の解明を目指す。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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