研究課題/領域番号 |
20H03250
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大杉 美穂 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00332586)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マウス卵 / 紡錘体 / 第二極体 |
研究実績の概要 |
脊椎動物の未受精卵は減数第二分裂の中期で停止しており、染色体を2組もっている。受精後にこの2組が分配されると、一方は第二極体とて放出され、残りの1組が受精卵の中で雌性前核となり次世代へと伝わる。また、哺乳類の受精卵形成過程は、雌性前核が多核化しやすい特性をもっており、多核化を防ぐ機構を必要としている。 本研究は「卵由来の染色体は、どのようにして受精卵に機能的に継承されるのか」という学術的問いに対し、哺乳類特有の制御機構に着目し て取り組む。すでにマウス卵・受精卵を用いた予備実験により得られている知見に基づき、(I)第二極体を0でも2でもなく1つのみ形成する 機構、および(II)雌性前核の多核化を抑制する機構の詳細について、分子レベルで明らかにすることを目的とする。 (I)第二極体を0でも2でもなく1つのみ形成する機構の解明について:第二極体を1つのみ放出するために必須の紡錘体の回転運動には、カルシウム振動と同期して回転スピードが緩急を繰り返す周期性があることを見出していたが、本年度はその原因を探る過程で、紡錘体の回転中には、回転を駆動することが知られている細胞質流動の方向が一過的に変化することを見出した。。 (II)雌性前核の多核化を抑制する機構について:マウス卵を用いた実験に加え、in vitro実験系の立ち上げを開始した。雌性染色体の代替として用いるためにDNAビーズをヌクレオソームビーズに効率的に変換する方法について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(I)第二極体を0でも2でもなく1つのみ形成する機構の解明については、細胞質流動の計測を行うために卵細胞をホールディングピペットで固定しながら極体形成の過程をライブ観察する系を確立し、紡錘体の回転運動中に細胞質流動の方向が一過的に変化するという大きな発見に至った。 (II)雌性前核の多核化を抑制する機構については、用いる予定であったKid欠損マウスの数の回復を待つ間に新たにin vitro実験系を立ち上げることにし、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(I)第二極体を0でも2でもなく1つのみ形成する機構の解明については、細胞質流動方向の変化と紡錘体回転速度の変化の因果関係を明らかにする。また、細胞質流動や紡錘体回転速度の変化には、受精卵を形成する上でどのような重要性があるのかを検討する。 (II)雌性前核の多核化を抑制する機構については、in vitro実験系を完成させ、Kidによる染色体一塊化にどのドメインが関わっているのかを明らかにする。
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