研究課題/領域番号 |
20H03251
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
前田 達哉 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90280627)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / TOR / TORC1 / グルタミン |
研究実績の概要 |
Pib2自体がグルタミンセンサーであり、かつTORC1を直接活性化する活性化因子でもあることを示した論文を投稿した。 1)Pib2のグルタミン検知機構の解明 : 構造解析に用いるためPib2タンパク質の高発現を試みたが、著しく不溶化しやすいため精製は困難であった。これは、Pib2の全長にわたって天然変性領域が存在しているためであろうと考えられた。そこで、天然変性領域に欠失を導入し、かつin vivoでの活性が失われない変異体を取得した。この変異体の可溶性は向上していたものの、構造解析に必要な濃度で組換えタンパク質を調製することは依然として困難であった。 そこで、Pib2とTORC1をストイキオメトリックな複合体として調製する方法として、TORC1の構成因子とPib2をフレキシブルなリンカーペプチドで繋いだ融合タンパク質として発現することを試みた。その結果、構成因子Kog1のC末端にPib2を融合したものが、Pib2依存的TORC1活性化能を保持していることを確認し た。 2)Pib2によるTORC1活性化機構の解明: 種々の変異体の解析からPib2とTORC1の結合領域を推定できたため、当初に予定していた架橋剤を用いたランダムな架橋実験ではなく、in vivo部位特異的光架橋法を用いて、Pib2側とTORC1側の相互作用部位を明らかにするための条件を検討した。 3)Gtr依存的TORC1活性化機構のin vitroアッセイ系構築 : Gtr1/2ヘテロ2量体は、in vivoにおいては液胞膜に存在していることが知られているが、液胞を調製する過程でその局在は失われることを見出した。そのため、アッセイ系構築のためには、Gtr1/2ヘテロ2量体を液胞膜へと強く局在化させる方法が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組換えPib2タンパク質が不溶化しやすいことや、in vivoでは液胞に局在化しているGtrヘテロ2量体が遊離してしまうなどの理由から、当初に予定してた生化学的な解析のいくつがが技術的に困難であることが明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
問題点を回避するための方法を導入するとともに、遺伝学的な戦略の比重を上げて研究を推進する。具体的には、「研究実績の概要」で述べた、TORC1構成因子とPib2を機能的融合タンパク質として発現し、ストイキオメトリックなPib2-TORC1複合体モデルとして解析に用いることや、Pib2-TORC1複合体の構造変化の解析にin vivo部位特異的光架橋法を用いること、さらに、Gtrヘテロ2量体からの制御を受けないようなTORC1変異体を単離して、既知のTORC1の立体構造を参照することで、Gtr依存的TORC1活性化機構の解明に役立てることを計画している。
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