研究課題/領域番号 |
20H03253
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
原 裕貴 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (80767913)
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研究分担者 |
久米 一規 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (80452613)
木村 健二 関西学院大学, 理工学部, 講師 (40644505)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オルガネラ / サイズ / 核 / 小胞体 / 線虫 / 分裂酵母 |
研究実績の概要 |
「複数オルガネラのサイズを連動して制御する仕組み」の理解を本研究の目的とし、2020年度は主に、オルガネラサイズ定量に必要な実験設備の整備と、線虫初期胚における数種類の特定オルガネラの観察、分裂酵母における特定オルガネラのサイズ摂動実験を行った。 手法に関しては、線虫初期胚の低侵襲条件のライブイメージングに必要な、スピニングディスク共焦点レーザー顕微鏡を整備した。前倒し使用の予算も活用し、共焦点ユニット、ならびにレーザー光源を導入し、共焦点ライブイメージングが可能な顕微鏡セットアップの整備に至った。また、整備までの期間を利用し、線虫初期胚における核のライブイメージングの条件検討、RNAiによる特定オルガネラのサイズ摂動条件の検討を進めた。 分裂酵母に関しても、ライブイメージングにより、オルガネラサイズの解析を進めた。さらに、特定オルガネラのサイズを操作した変異体を作製し、他のオルガネラへのサイズ制御への影響の検証を進めた。 上記のイメージングデータを基に、2つの新たな核サイズの制御モデルの着想を得た。この着想を、アフリカツメガエルのin vitro無細胞再構成系を利用し、検証した。ひとつは、細胞内に存在する卵黄顆粒が核近傍に集積し、その物理的な障害が小胞体構造の構築を妨げ、核サイズの増大速度を制御するモデルである。この卵黄顆粒が核サイズ制御に影響を与える機構は、先行研究では着目されていない新たな観点からの核サイズの制御機構である。現在この成果に関しては、論文を投稿し、査読中である。また、もうひとつの制御モデルである、核内DNAが核サイズに与える影響についても解析し、その成果を論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.(当初計画)オルガネラサイズ定量法の確立: 線虫初期胚の低侵襲条件のライブイメージングに必要な、スピニングディスク共焦点レーザー顕微鏡を整備した。前倒し使用の予算も活用し、共焦点ユニット、ならびにレーザー光源を導入し、共焦点ライブイメージングが可能な顕微鏡セットアップの整備に至った。整備までの期間を利用し、線虫初期胚における核のライブイメージングの条件検討、RNAiによる特定オルガネラのサイズ摂動条件の検討を進めた。コロナ禍で機器の選定・導入過程に遅れが生じたが、この設備を用いた線虫初期胚のライブイメージング観察が大きく進展することが期待できる。 2.(当初計画)サイズネットワークの定量:線虫の初期胚発生過程ならびに分裂酵母において、特定2種類のオルガネラ間に構造とサイズの相関関係が見られる予備的な実験結果が得られた。この予備データを基に、詳細な定量によるサイズ変化の特徴を理解し、さらには両者の関係を制御する分子機構の特定へと発展が可能である。 3.(新規方向性)卵黄顆粒との関係:上記のイメージングデータを基に、新たな核サイズの制御モデルの着想を得た。この着想を、アフリカツメガエルのin vitro無細胞再構成系を利用し、検証した。これは、細胞内に存在する卵黄顆粒が核近傍に集積し、その物理的な障害が小胞体構造の構築を妨げ、核サイズの増大速度を制御するモデルである。この卵黄顆粒が核サイズ制御に影響を与える機構は、先行研究では着目されていない新たな観点からの核サイズの制御機構である。現在この成果に関しては、論文を投稿し、査読中である。 4.(新規方向性)DNA量との関係:さらに、核内DNAが核サイズを制御するモデルにも着想し、in vitro無細胞再構成系を利用し、検証した。この研究成果については論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
オルガネラサイズ定量法の確立:整備したイメージング機器を活用し、さらに多数のオルガネラに対する定量観察を推進する。観察用の線虫株の導入と、観察後の定量法を積極的に推進する。これにより、複数オルガネラ間のサイズネットワークの理解を試みる。この研究内容に関しては、研究責任者(原)の研究室所属の学部生2名が解析を担当し、さらに分担者(木村)研究室でも解析を進めており、円滑に実験を遂行する人的環境を整えている。 核サイズを中心としたサイズネットワーク機構の検証と決定因子の解明:得られた特定オルガネラ間のサイズネットワークの特徴を基に、線虫のRNAi(研究責任者・原)や分裂酵母の変異体作製(分担者・久米)を通して、オルガネラのサイズ摂動実験を行う。これにより、相関関係を超えた因果関係の理解を試みる。責任者と分担者の両研究室との研究交流も進めながら、線虫と分裂酵母との実験結果の比較を行い、両者の相違点・共通点から進化の観点から、サイズ制御機構の考察も試みる。
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