研究実績の概要 |
本研究課題は、R-Rasサブファミリー低分子量Gタンパク質(R-Ras, TC21, M-Ras)の活性制御のin vivoにおける役割の解明を目的とした。 (1) R-Rasサブファミリーの3分子のマウス臓器内(in vivo)での発現パターンを調べるために、まず市販の特異的抗体を用いた免疫組織染色を試みたが、使用した市販抗体の感度ならびに特異性が十分ではなく、信頼出来るデータが得られなかった。そこで、CRISPR/Cas9システムを用いたマウス受精卵のゲノム編集により、内在性のR-Ras, TC21, M-Rasタンパク質それぞれのN末端にHAタグを付加したノックインマウスを作製した。樹立したノックインマウスの臓器をWestern blot法により解析したところ、抗HA抗体によって特異的なバンドが検出された。また、ノックインマウスの臓器切片を抗HA抗体を用いた免疫組織化学法によって解析したところ、特異的かつ高感度でシグナルを検出することが出来た。この手法を用いてマウスの脳や眼球におけるR-Rasサブファミリー3分子の発現パターンを調べたところ、それぞれの発現パターンは同一ではないが、比較的類似していることが判った。 (2) TC21(R-Ras2)が発生期のマウス網膜(in vivo)において果たす役割を調べるために、TC21遺伝子の強制発現ベクターやshRNAノックダウンベクターを、in vivoエレクトロポレーション法を用いて発生期のマウス網膜に導入し、機能獲得実験・機能喪失実験を行った。その結果、TC21遺伝子の強制発現とノックダウンいずれの場合も網膜細胞の分化に顕著な影響を与えた。このことから、TC21がマウス網膜発生における重要な制御分子であると考えられた。
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