研究課題/領域番号 |
20H03259
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 淑子 京都大学, 理学研究科, 教授 (10183857)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 初期胚 / 血管モデリング / 血流 / メカノバイオロジー / 始原生殖細胞 |
研究実績の概要 |
体の隅々にまで張り巡らされる血管網は、酸素や栄養などを運ぶ重要な運搬流路である。一方で初期胚に出現する原始血管網はそれ以外の役割も担うと考えられているが、その実態はよくわかっていない。これまでに、初期胚における原始血管網の血流を局所的に操作すると、そこから遠く離れた場所の血管パターン(血管リモデリング)にまで変化が及ぶことを見出している。本研究では、1)局所的な血流刺激で制御される血管リモデリングが、2)さらに胚のあちこちで連鎖的に血流変化を引き起こして新たなリモデリングを惹起し、3)最終的に血管リモデリングに連動して器官形成が制御されるという一連の流れを実証し、血流メカノ刺激の連鎖に連動する器官形成の理解を深めることを目的としている。 1)に関しては、血流というメカノ刺激による血管内皮細胞内でのシグナル伝達経路の解析を進めた。2)に関しては、トリ初期胚の広範囲にわたる血流速度の時空間パターンについて、粒子イメージ流速計測法(PIV: Particle Image Velocimetry /ImageJ)を用いたマップ作製を進めている。3)に関しては、血流と器官形成との連関について、血流にのって運ばれる始原生殖細胞の胚内ダイナミクスを調べたところ、始原生殖細胞が他の細胞に比べて優位に硬く、そのために生殖巣原基付近の特別な微細血管に詰まりやすいことがわかった。また詰まった場所から血管の外に遊出する(Extravasation)際には、始原生殖細胞はその硬さを瞬間的に軟化させるなど、これまで知られていなかった細胞のダイナミクスが見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
始原生殖細胞の硬さの原子間力顕微鏡による計測が必要であったが、新型コロナウィルス感染防止のためのガイドラインのために国内出張が大幅に限定され、予定していた解析が遅れた。また血流メカノ刺激と細胞内シグナリングの解析においては、良く知られたシグナリング経路とは異なるものが働いていることがほぼ明らかになったが、実際にどのようなシグナル経路であるかについての同定のために、予想以上の時間と労力を要している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染防止のための規制緩和により、原子間力顕微鏡による計測を効率良く進める。また血流メカノ刺激と細胞内シグナリングの解析においては、希少なシグナリング経路の同定に向けて、さまざまなインヒビターを順次試していく予定である。
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