研究課題/領域番号 |
20H03263
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
笹井 紀明 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (80391960)
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研究分担者 |
磯谷 綾子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (20444523)
近藤 亨 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (30270573)
別所 康全 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70261253)
白井 学 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, オープンイノベーションセンター, 室長 (70294121)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞分化 / 神経管 / ニワトリ胚 / ゲノム編集 / マウス胚 |
研究実績の概要 |
生物の各器官には、様々な機能を持つ細胞が位置的だけでなく量的(細胞数)にも正確に配置されており、それらが相互作用し合うことによって全体として特有の機能を発揮している。本研究の目的は、発生途上にある中枢神経系をモデルにして、シグナルの経時的な変化、時空間特異的な増殖と細胞の分化を司る分子を同定して機能解析し、組織内での多様な細胞分化・パターン形成の分子メカニズムを明らかにすることである。 2020年度は、神経前駆細胞を分化方向にスイッチする遺伝子の1つをスクリーニングにより同定し、主にニワトリ胚を用いてその機能を明らかにした。ニワトリ胚から単離した神経前駆細胞に経時的に遺伝子発現解析を行い、分化と同時に発現が惹起される遺伝子を網羅的に探索した結果、いくつかの分化制御因子が単離された。このうちの1つの転写因子Sox14は神経管が形成された直後から前駆細胞に発現し、神経前駆細胞の分化を一定段階まで促進することが明らかになった。さらに、同時期に同細胞で発現する別の転写因子Chx10との機能的差異を解析したところ、Sox14は神経分化を促進する役割を持つ一方、Chx10は細胞運命(分化方向)を決める因子であることが示唆された。このように2つの転写因子が相互的に働くことにより、分化が進行するメカニズムの一端が明らかになった。 同時に、Sox14のノックアウト細胞をマウスES細胞において作成し、マウスの神経分化でSox14が必須の役割を果たすことを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前駆細胞と分化のスイッチを制御する転写因子を同定したほか、その解析を進めて機能を明らかにできた。また、幹細胞から脳神経系の特定の領域へと分化させる系を構築したほか、ゲノム編集技術を用いて、遺伝子変異がもたらす分化への影響を直接観察する系を構築できたため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、ニワトリ神経管の細胞を制御するメカニズムについて、Sox14の下流遺伝子の解析、細胞増殖のスピードを計測できる系を考案し、神経前駆細胞の増殖スピード、分化とのバランスをリアルタイムに計測することを目指す。また、マウスES細胞から脳神経系の特定の領域を分化させるほか、ゲノム編集技術を用いて遺伝子変異細胞を作成し、同様の分化条件で分化させた時の表現型を解析し、特定の遺伝子がどのように増殖と分化のバランスに寄与するのかを、網羅的発現解析技術によりゲノムワイドに明らかにする。
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