研究課題/領域番号 |
20H03266
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐田 亜衣子 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特任准教授 (80779059)
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研究分担者 |
柳沢 裕美 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 教授 (40746301)
泉 健次 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80242436)
水野 秀信 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特任准教授 (00567159)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 表皮幹細胞 / 幹細胞不均一性 / ニッチ / 三次元培養 / 細胞外マトリクス / 遺伝子改変マウス / 皮膚再生 |
研究実績の概要 |
本研究は、皮膚などの上皮組織に存在する不均一な幹細胞集団の領域化を制御するメカニズムの解明を目的に実施した。本年度は、上皮幹細胞の領域化を担う因子として細胞外マトリクスfibulin-7の解析を中心に行った。マウス皮膚において、2年間にわたる細胞系譜解析を行ったところ、加齢とともにSlc1a3陽性の分裂頻度の高い表皮幹細胞が徐々に失われることを見出した。細胞外マトリクスFibulin-7を欠損すると、Slc1a3陽性の高分裂表皮幹細胞クローンの減少促進、創傷治癒の遅延、炎症関連遺伝子の上昇が見られ、皮膚老化様の表現型を示すことが分かった。Fibulin-7をマウス初代培養表皮幹細胞にレンチウイルスを用いて過剰発現させることで、分裂速度が遅くなり、炎症性サイトカインに対して保護作用を持つことが示唆された。質量分析によりFibulin-7が結合するタンパク質を同定し、固相結合アッセイ法を用いFibulin-7との直接的な相互作用を確認した。以上の結果よりFibulin-7は、表皮幹細胞周囲の微小環境をつくりだすことで、幹細胞の老化を防ぐ鍵となるマトリクスであることが示された。 また、皮膚の凹凸構造を模倣したマイクロパターンゲルを足場として用い、in vitroで皮膚組織を構築するための条件検討を行った。作製した皮膚モデルは、凍結包埋後、切片を作製し、分裂頻度の異なる表皮幹細胞マーカーや細胞外マトリクス、表皮系譜のマーカーを用い、ヒト皮膚組織との比較解析を行った。その結果、皮膚モデルでは、基底膜形成や、表皮幹細胞の分裂・分化は正常であるものの、高頻度分裂な表皮幹細胞集団がin vitroでは誘導されていないことが明らかになった。この結果より、高頻度分裂な表皮幹細胞集団を誘導する条件を見出すことが、三次元培養下で生体条件を再現するための指標として使用できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
In vivo、in vitroの実験ともに順調に進捗した。上皮幹細胞の領域化を担う因子として細胞外マトリクスfibulin-7に関する研究成果が当初の予定より早く論文発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、表皮幹細胞の領域化に必須な細胞外マトリクスfibulin-7の過剰発現マウスの表現型解析を進める。 In vitroの実験においては、マイクロパターンゲルやアロダームの培養において、表皮幹細胞の不均一性がどの程度再現されているかをヒト皮膚組織との比較解析によってさらに条件検討を進める。並行して培地やECMの変更、増殖因子の添加により表皮幹細胞の不均一性の変化が見られるかについて検討を行う。また分裂頻度の低い表皮幹細胞、高い表皮幹細胞で発現する遺伝子をヒト初代培養表皮幹細胞で過剰発現し、表皮幹細胞の増殖や分化、不均一性、増殖因子の下流標的への影響を見る。これにより、表皮幹細胞の不均一性誘導の制御メカニズムを解明する。マウス皮膚、口腔組織の中で上皮幹細胞が領域化するメカニズムの相違点や類似点を比較解析し、論文発表へ向けたデータを取得する。
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