研究課題/領域番号 |
20H03267
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
加藤 譲 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (60570249)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マウス / 卵巣 / 原始卵胞 / 卵母細胞 / RNA制御 |
研究実績の概要 |
哺乳動物において卵子は最も未成熟な卵胞である原始卵胞を供給源としてその卵胞成長を活性化することにより産生される。したがって、長期に渡り卵子を産生し続けるためには原始卵胞の維持と活性化が適切に制御されなければならない。しかし、その分子機構に関する知見は未だ乏しいのが現状である。本研究ではマウスをモデルとして、継続的な卵子形成機構の理解に取り組む。具体的は、原始卵胞における卵母細胞の活性化制御に関わる2つのRNA結合タンパク質(タンパク質A, B)に着目し、RNA制御機構が介する卵母細胞の活性化制御機構の解明を目的とする。 申請者によるこれまでの研究から、翻訳促進に関わるタンパク質Aは卵母細胞の生存に必須であり、卵母細胞におけるその過剰発現は卵母細胞の活性化を促進する。一方、タンパク質BはRNAの分解に関わり、そのノックアウトマウスでは卵母細胞の活性化を促進することが見出されている。そこで本研究では両タンパク質に結合するRNA及び相互作用因子の同定から、卵母細胞の活性化制御に関わるRNA制御メカニズムの解明を目指している。 本年度はFLAGタグを融合したタンパク質A発現マウスの卵巣を用いて免疫沈降を行い、質量分析により共沈澱するタンパク質の網羅的な同定を行った。その結果、細胞骨格や翻訳関連因子などのタンパク質の結合が見られた。一方、タンパク質Bについては、ノックアウトマウスから卵母細胞を単離し、RNA-seqによる遺伝子発現変化を解析した。その結果、およそ800の発現変動する遺伝子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響により当初の計画で予定したタンパク質Aに結合するRNAの同定をRIP-seqで同定することができなかった。一方、遺伝子Bノックアウトマウスにおける組織学的な解析から、同変異体では卵母細胞の異常な変形が新たに見出され、RNA-seqの解析からその原因と推測される幾つかの候補遺伝子が見出されるなど、当初予想していなかった新たな発見もあった。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質Aに対しては、結合するRNAをRIP-seqにより同定する。同様にタンパク質Bに結合するRNAを同定するため、HAタグを融合したトランスジェニックマウスを作成し、RIP-seq解析を行う準備を進める。このトランスジェニックマウスを用いてタンパク質Bと相互作用するタンパク質の同定も進める。その上で、両者に共通する標的RNAの有無を解析し、卵母細胞の活性化とその抑制に働く2つの因子間の機能的相互作用の有無について検討を進める。また、遺伝子B変異体において新たに見出された異常の原因究明を進め、卵母細胞におけるタンパク質Bの細胞生物学的意義の理解に迫る。
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