サブプレートニューロン(SpN)は大脳皮質で最初に誕生、成熟するニューロンで、生後は大部分が細胞死により消失することが知られている、脳発達期に一過的に存在するニューロンであるSpNは、神経細胞移動や初期の神経回路形成など、脳構築過程で必須の役割を果たしており、また精神疾患との関連も報告されている。しかしその機能や細胞の特徴など未解明な部分も多い。本研究ではSpNの分子発現の特徴を捉え、サブタイプや発生起源、その役割の詳細等を明らかにすることを目的としている。
最終年度である2022年度はSpNの胎生期の分子マーカー候補の絞り込みと、RNAScope法を用いたmRNAの局在の確認をすることによりサブタイプの詳細が明らかになった。また、生後発達過程における細胞の減少の実態についても、チミジンアナログを用いた早生まれニューロンの標識法と免疫染色を組み合わせることで、どのサブタイプがより減少しやすい傾向にあるのかについても解析が進んだ。さらに空間的遺伝子発現解析(Visium)のニワトリ胚脳とマウス胎仔脳の比較解析により、マウスでSP層に特異的に発現しているマーカー遺伝子がニワトリでも層にはなっていないが、領域特異的な発現が見られることも明らかになり、SpNは祖先型羊膜類から既にそのマーカー遺伝子を発現する細胞として存在していたことが示唆された。また、マウス胎仔脳のVisiumデータの発生段階別のデータを統合したクラスタリング解析を行い、解剖学的な領域分けと一致する細胞クラスターの情報が得られた。各クラスターでの特徴的な遺伝子発現を確認することで、脈絡叢、視床、前障等の領域での発生期における新規マーカー遺伝子も同定できた。
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