研究課題/領域番号 |
20H03274
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
多田 安臣 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 教授 (40552740)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 植物免疫 / 疾病防御応答 / 植物ホルモン / サリチル酸 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
申請者らは、SAB経路の最上流で機能し、CBP60g、SARD1やPBS3などのSA生合成関連遺伝子を直接発現誘導する転写因子の候補として、転写因子SBR(SB-binding Regulator)1、SBR2およびSBR3を同定している。Dexamethasone(DEX)誘導性のGFP-SBRsおよび構造的に類似しているが認識シス配列が異なるSBR-likeのT3植物を得た。本植物にDEXを処理したところGFP-SBR-like以外のGFP-SBRsは、コントールと比較し顕著にサリチル酸(SA)を誘導蓄積した。現在、これら植物にDEXを処理し、RNA-seq解析を行なっている。また、CRISPR-Cas9によってSBRシングルおよび多重変異体を作出した。本植物に対してUV処理を行い、SAが蓄積するかを現在調査中である。また、SBRのゲノムDNA上における分布を調査するため、上記GFP-SBRs植物を用いてChIP-qPCR解析を行なった。その結果、SA合成酵素であるPBS3のプロモーターを認識することが明確に示された。現在、ChIP-seq解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたDex誘導性の組換え植物の解析から、期待通りの結果が得られた。またCRISPR-Cas9による遺伝子破壊株も完成したので、今後の解析に利用することができる。本解析が困難である場合、SRDX技術をもちいたSBRの機能阻害を考慮する。
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今後の研究の推進方策 |
SBRはタバコおよびシロイヌナズナにおいてSAの生合成を誘導するので、実際にSBRがSA生合成関連遺伝子群、特に標的候補である326遺伝子の発現制御に関与するかをRNA-seq解析によって調査する。各種変異体、p35S:GFP-SBRおよびpDEX:GFP-SBRに対してP. syringae接種およびUV照射を行い、SAが蓄積上昇する時間帯(3~12時間)にサンプリングし、RNA-seq解析に供試する。野生型植物と比較してSBR変異体で発現量が低下し、過剰発現体で発現レベルが上昇する遺伝子群を選抜する。これら遺伝子群と326のSA生合成関連遺伝子との重複を求め、SBRのSA生合成への関与を明確にする。 また、SBRが直接制御する遺伝子群を決定するために、GFP-SBRを用いてChIP-seq解析を行う。SBRの結合領域をゲノムワイドに決定し、その認識配列候補をMEME-ChIP解析によって算出する。本シス配列候補と、先に予測したSBR結合配列が一致するかを検証する。本解析と上述の発現解析とを合わせ、SBRが直接制御する遺伝子群を明らかにする。一方、pSBR:GFP-SBRを用いた予備実験の結果から、SBRタンパク質は恒常的に存在することが分かっている。SBRのシス配列への結合が病原菌接種やUV処理で亢進するのか、或いは結合レベルは処理以前から変動しないのかなど、SBRのシス配列への結合特性を示すことでSA合成経路の活性化機構を考察する。
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