光合成シグナル伝達因子として同定したRaf様キナーゼPRAFの機能制御機構、PRAF機能の進化的保存性の解明を目的として、研究を進めた。 まず、PRAFの顆粒形成について、その形成様式を調べる実験を行った。PRAFタンパク質はキナーゼドメインの他に、多量体化モジュールであるPB1ドメインや、複数の天然変性領域をもつ。欠失解析を行ったところ、PB1ドメインは顆粒形成には必要ではなく、一番長い天然変性領域が顆粒形成に重要であることがわかった。天然変性領域は、液-液相分離(溶液が均一にはならず2つ以上の液相に分離する現象)を介した液滴形成を引き起こすことが知られているため、PRAF顆粒は液-液相分離により形成されることが示唆された。今後は阻害剤実験やFRAP実験などを行い、液-液相分離により形成された液滴である証拠を強化するとともに、顆粒形成を引き起こすメカニズムを解析する。 PRAFの標的候補として、複数の翻訳制御タンパク質を同定した。CRISPR-Cas9ゲノム編集を用いて、これらの変異体を作出した。そのうちの一つは有意な成長阻害を示したが、もう一つは示さなかった。今後は糖代謝への影響を調べるとともに、光合成依存的な翻訳制御への関与を調べていく。 進化的保存性を解析するため、シロイヌナズナに存在する7個のPRAFホモログ遺伝子のうち、系統関係的に最も近縁と推定される2つの遺伝子について、ストックセンターより変異体を入手し、二重変異体を作出した。表現型の詳細な解析を進めている。
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