研究課題
近未来において、大気中CO2濃度の急激な上昇は、CO2を吸収し光合成を行う植物の営みにさまざまん影響を及ぼすことが考えられるが、植物がCO2を感知・応答し、適応する分子メカニズムの解明は進んでいない。気孔装置は、一対の孔辺細胞とその周囲を取り囲む副細胞から構成され、二酸化炭素(CO2)や水蒸気などのガス交換の調節機能を担っており、植物の成長制御の根幹となっている。その気孔開閉制御には、孔辺細胞と副細胞の協調的な膨圧制御が重要だと考えられている。光刺激などで気孔が開口するときには孔辺細胞は膨張する一方、副細胞は収縮する。またCO2刺激などで気孔が閉鎖する際には孔辺細胞は収縮する一方、副細胞は膨張する。これらの隣り合う細胞が真逆の環境応答を示す分子メカニズムや副細胞の機能については不明な点が多い。そこで我々は、副細胞の機能や孔辺細胞との協調行動に関わる因子を同定するための準備として、気孔副細胞の遺伝子発現プロファイルを試みた。孔辺細胞および孔辺細胞を取り囲む副細胞(敷石細胞)をレーザーで選択的に切り出しRNA-seq解析をおこなった。得られたデータと、葉肉細胞に対するマイクロアレイデータとを比較解析することで、副細胞で特異的に発現している新たな遺伝子群を抽出した。さらに、選抜した遺伝子の推定プロモーター制御下でレポーター遺伝子を発現させた植物を作出し、共焦点顕微鏡にて組織特異性を検証した結果、副細胞特異的な発現を可能とする有用なプロモーター配列を同定した。
2: おおむね順調に進展している
副細胞の機能や孔辺細胞との協調行動に関わる因子を同定するために有用な遺伝子発現情報や解析ツールを整備した。
副細胞で特異的に発現する候補遺伝子の中から、気孔開閉制御を担う新規因子を同定するため、遺伝子破壊株の気孔応答性について蒸散測定装置などを用いて詳細に調べる。さらに孔辺細胞と副細胞で真逆の挙動を示す膜交通因子PATROL1に着目し、同定した副細胞特異的なプロモーターを用いて、patrol1変異体に副細胞特異的にPAROL1を発現させた場合のプロトンポンプの挙動や気孔のCO2応答への影響について調べる予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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