本研究ではシロイヌナズナの受精後に花粉管を受け入れなかった方の助細胞(残存助細胞)が受精した中央細胞(胚乳)と細胞融合する現象である助細胞胚乳融合の発生学的意義を解明するヒントとしてDEAD-End 現象に着目している。DEAD-Endとは二本目の花粉管を受け入れた胚珠特異的に観察される、花粉管内容物が胚乳へと到達する新奇の受精現象である。われわれはDEAD-Endが、助細胞胚乳融合によって胚乳と構造的に一続きとなった残存助細胞に対し、受精後の誘引停止機構を間逃れて到達した2本目の花粉管が内容物を放出することによって起きる現象であるとの仮説を立てている。この仮説を検証するために、これまで順遺伝学的アプローチによるシロイヌナズナの変異体解析から、助細胞胚乳融合に必要なE3ユビキチンリガーゼCTL17を同定した。2021年度では野生株、ctl17変異体にくわえ、2本目の花粉管誘引率とDEAD-End率が共に高いein3 eil1二重変異体、そしてein3 eil1 ctl17三重変異体について、助細胞胚乳融合をモニタするマーカー遺伝子をもつ植物を整備した。2022年度では、これら全ての植物でのDEAD-End率を定量解析を行い、ein3 eil1 二重欠損によって誘導されるDEAD-Endがein3 eil1 ctl17三重変異体でほとんど観察されなくなることを見出した。また、DEAD-Endの抑圧によって、2本目の花粉管から放出される精細胞が受精卵に到達することで多精率が上昇するかどうかも検討を進め、野生株とein3 eil1二重変異体については定量的なデータを取得した。
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