本研究では、オートファジーがどの様にして異常オルガネラを認識し、それを過不足なく分解するのか、その機構を分子レベルで明らかにすることを目的としており、今年度は以下の課題を推進した。 オートファゴソームに基質の選択性を付与するATG8に着目し、ATG8と相互作用するペルオキシソーム関連タンパク質を単離・同定することで異常ペルオキシソームの特異的分解機構の解明を試みてきた。GFP-ATG8を発現させたトランスジェニック植物を用い、GFP抗体で共免疫沈降(Co-IP)してくるタンパク質を質量分析器で同定し、それらが緑葉ペルオキシソーム分解に関わるのか、生化学的・細胞生物学的解析により検証してきたが、昨年度は植物特異的新規アダプタータンパク質の発見には至らなかった。この原因として、ATG8と相互作用するタンパク質が非常に多く検出されること、また、ペルオキシソーム分解に関わるアダプターはペルオキシソーム膜タンパク質でない可能性もあり、候補タンパク質の絞り込みが難しい点が挙げられた。 そのような状況の中、偶然にも、アダプターの絞り込みができそうな興味深い現象を発見した。オートファゴソーム前駆体(隔離膜)までしか作ることのできないatg変異体では、隔離膜と電子密度の高い異常な領域近傍の膜との結合を介して緑葉ペルオキシソームが凝集することを見出していたが、亜鉛欠乏条件ではその凝集が起こらず、ペルオキシソームが分散していた。この結果は、亜鉛欠乏条件ではATG8とアダプターの相互作用がなくなった為と考えられた。そこで、亜鉛十分(+Zn)と亜鉛欠乏(-Zn)条件でCo-IPを行い、+Znでのみ同定できるタンパク質を見つけることで、候補を絞り込み、目的のアダプターの同定を試みた。その結果、候補タンパク質を一つ同定でき、現在、生化学的・細胞生物学的解析により検証している。
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