本研究は、始原生殖細胞(生殖細胞系列の前駆細胞)においてX染色体上の遺伝子の発現をオス(XY)とメス(XX)で一致させる遺伝子量補償が欠如しているという発見を基に、生殖細胞系列自律的な性決定機構を解明することを目的としている。本研究では、(1)XY型の始原生殖細胞において遺伝子量補償を担うMSL複合体の構成因子を発現させると、その細胞がメス化すること、(2)始原生殖細胞における遺伝子量補償の欠如にnanos遺伝子が関わることを示唆する結果を得た。さらに、生殖細胞系列のメス化に関わるX染色体上の新規候補遺伝子を同定した。以上の成果は、生殖細胞系列の性決定機構を明らかにする上での新たな基盤となる。
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