研究課題/領域番号 |
20H03288
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
安東 宏徳 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 教授 (60221743)
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研究分担者 |
吉村 崇 名古屋大学, 生命農学研究科(WPI), 教授 (40291413)
大森 紹仁 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 助教 (50613527)
豊田 賢治 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 特任助教 (00757370)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生殖リズム / 体内時計 / 潮汐サイクル / 概潮汐時計 / 月周リズム / 生殖神経内分泌系 |
研究実績の概要 |
本研究では、概潮汐時計の機能的分子基盤の解明を目指して、潮汐サイクルおよび月齢に同調して発現する遺伝子群を網羅的に探索すると共に、それらの遺伝子の発現抑制による半月周性の産卵行動リズムへの影響を検討する。また、概潮汐時計と概日時計から構成されると考えられるリズム発振機構による生殖神経内分泌系の周期的調節の機能形態学的基盤を解明する。さらに、より普遍的な生物リズムの研究としての展開を目指し、半月周性リズムのOntogenyを解明する。令和3年度は、次の3つの研究成果を得た。 1)潮汐サイクルと半月周性リズムに関連する遺伝子群を探索する試料として、産卵リズムの異なる伊豆川奈と佐渡姫津において、大潮と小潮の日の夕刻にクサフグ成魚を捕獲して脳を採取した。 2)潮汐サイクル/半月周性リズムを作る時計候補遺伝子の機能解析のため、Vivo-モルフォリノによる遺伝子発現抑制実験系を検討した。脳髄膜で作られる糖たんぱく質であるエペンジミン(EPN)を標的遺伝子として、Vivo-モルフォリノ(EPN-MO)の配列、投与量、投与方法を検討した。また、ウェスタンブロット法と免疫染色法を用いたEPNタンパク質の解析系を確立した。EPN-MOを投与した個体では、遊泳阻害が見られたが、EPNタンパク質量の変化は検出されなかった。 3)クサフグ仔稚魚に潮汐サイクルや月齢に同調したリズムがあるのかどうかを明らかにするため、産卵期に親魚を採集して人工授精を行い、仔稚魚を育成した。DanioVisionを用いて、クサフグ仔稚魚の自発行動リズムを解析した結果、成長段階によって明暗周期に関して自発行動リズムが異なることや明暗の切り替え時に自発行動量が高くなることなど、クサフグが独自の光応答性を持つ可能性が示された。さらに、EthoVision XTを用いたクサフグ幼魚の自発行動解析系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に新型コロナウイルス感染拡大と施設の改修工事のため実施できなかった、Vivo-モルフォリノによる遺伝子発現抑制実験系の確立とEthoVision XTを用いたクサフグの行動解析系の確立を完了することができた。しかし、EPN-MO投与による発現抑制についての定量的な検証はさらに必要である。また、半月周性の産卵行動リズムに関わると考えられるクリプトクロームとメラトニン受容体の脳内分布の解析については、従来のin situ hybridization法では検出できないことがわかったため、より高感度でmRNAを検出できるRNAscope法を用いて、両遺伝子mRNAの脳内分布の解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
潮汐サイクル/半月周性リズムに関連する遺伝子群の網羅的探索については、採取した脳試料を用いて松果体と間脳のRNA-Seqを行い、伊豆産の魚と佐渡産の魚において半月周期で発現変動する遺伝子および両地域の間で差次的に発現している遺伝子を網羅的に探索する。得られた潮汐サイクル/半月周性リズム関連遺伝子群の中で、転写および翻訳の調節に関わると考えられる遺伝子群を選び出し、抗体を作製して発現の定量的解析系を確立すると共に、Vivo-モルフォリノによる翻訳抑制実験を実施する。仔稚魚の自発行動リズムについては、DanioVisionを用いてさまざまな明暗周期下で行動リズムを解析して、光応答性を解析すると共に、野外で稚魚を採集し、野生の稚魚の自発行動リズムを解析する。さらに、斜面を作った水槽における成熟魚の斜面への集合行動のリズムをEthoVision XTを用いて解析する。クリプトクロームとメラトニン受容体の発現細胞については、RNAscope法を用いて両遺伝子mRNAの脳内分布を明らかにする。
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