研究課題/領域番号 |
20H03290
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
中村 桂一郎 久留米大学, 付置研, 客員教授 (20172398)
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研究分担者 |
太田 啓介 久留米大学, 医学部, 教授 (00258401)
平嶋 伸悟 久留米大学, 医学部, 講師 (70647784)
力丸 由起子 (西由起子) 久留米大学, 医学部, 講師 (90368960)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間質細胞 / 結合組織構築 / 組織機能動態解析 / 3次元微細構造 / FIB/SEM / SBF-SEM |
研究実績の概要 |
本研究計画では、身体各所の結合組織に分布する間質細胞(線維芽細胞)の分布領域における該当細胞の形状・分布様式等の形態的特徴と機能分化との関連について検討することを当面の目標として、それら細胞群の3次元微細構造についてFIB/SEM tomography法をもちいて系統的に観察・解析することを当面の目標としている。令和2年度においては、主として泌尿・生殖器器系臓器のうち管腔臓器である男性生殖器の精管および精嚢を対象に解析を行い、その一部は論文として公表し、また、論文作成中である。 研究内容の概要は、精管においては、免疫組織化学的観察を行い、精子輸送に重要である輪走平滑筋組織においてPDGFα陽性間質細胞がしかるべき配置をもって分布することを検証し、精管の起始部(精巣上体との移行部)から射精管に至る部位による差異、それぞれの部位における平滑筋細胞との位置/構造的関連性について、先行論文との関連付けのもと研究を進め、3次元微細構造解析に繋がる基礎データについての論文がScientific Reportsに掲載された(広重ら2021;大学院生)。これらデータに基づき、光顕レベルと電顕レベルの研究を繋ぐCLEM法によるアプローチで3次元微細構造解析を行い、実験数を増やすと共に、論文作成中である。次に、精嚢については、生理学分野の研究者(武谷ら)との共同研究によりカルシウムイメージング法等による該当細胞の機能実験を行い、それらの研究成果については論文投稿の準備中である。 以上のような実験計画を実現するために、FIB/SEM tomography解析のための実験装置の稼働・維持および観察・データ取得を順次進行している。さらに、本研究計画のための画像解析装置一式を導入し、現在、セットアップおよびAI(人工知能)支援型画像解析を実現するための試行を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響もあって実験が制限されたため予定した試料作製を計画通りに進行することが叶わなかった。また、令和2年度においてはコロナ禍の影響もあり、予定していた血管・リンパ管の外膜および一連のリンパ組織の間質細胞(線維芽細胞)についての解析には至っていない。しかし、それまでのデータ、および、実施可能な実験・観察、さらに論文作成を行い、上記成果が得られている。今後順次、未解析データの処理および新規導入した画像解析装置を用いた解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度になって、研究代表者の定年退職のため所属が久留米大学医学部解剖学講座主任教授から同大学付置研の高次脳疾患研究所客員教授への変更となり、それに伴う研究実施体制の変更を行った。変更は代表者のみであり、分担者は引き続き解剖学講座および先端イメージング研究センターに所属しているため、研究継続は滞りなく進行できる。また、本研究計画の主要実験機器であるFIB/SEMは先端イメージング研究センターで稼働している。さらにまた、同センターにおいて令和2年度私学助成により導入された新規微細構造解析装置(電子顕微鏡)および電顕連続画像解析装置の使用も可能となったことから、画像取得実験の効率化が期待される。 令和3年度には、引き続きこれまでに所得した泌尿・生殖器系臓器の連続画像ビッグデータの解析を行う。また、実験動物の血管・リンパ管の解析を視野に研究対象を拡大する。当該研究室で保有する全身の細胞でGFPを発現するgreen miceによるwhole mount解析(上記広重ら2021の論文で報告)を試み、それにより微細構造解析に有利な部位を特定し、研究分担者の太田らが開発しているCLEM法を活用して光顕・電顕相関観察・解析を進める。実験動物をもちいる実験操作については、これまで通り学内所定の施設で行い、先端イメージング研究センターの顕微装置により取得した連続画像データの解析は、令和2年度導入の画像解析PCで行う。連続画像は膨大なデータ量となるため、それらの解析に求められる適切なAI支援の試行も重要な課題である。
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