研究課題/領域番号 |
20H03294
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
志賀 向子 大阪大学, 理学研究科, 教授 (90254383)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 光周性 / 概日時計 / JH / pars lateralis / PERIOD |
研究実績の概要 |
実験(A)時計細胞s-LNvとDNmの神経接続および日長応答(B)s-LNv-DNmネットワークの光周性に対する役割(C)JH合成抑制分子の解析において以下の結果を得た。 (A)バックフィルと免疫組織化学の結果、PLニューロンとPER陽性DNm細胞はごく近傍に位置する別細胞であった(N=1)。ルリキンバエのPER抗体を新規作成した。キイロショウジョウバエのDN細胞に発現するDiuretic hormone31 (Dh31)のルリキンバエ脳内発現部位について調べた。in situ hybridizationと免疫組織化学の結果、12箇所の脳領域にDh31が発現し、4つのPL細胞がDH31陽性を示した。また、qPCRにより脳内発現量が3日間の短日条件で有意に上昇する遺伝子を1つ見つけた。日長応答遺伝子を網羅的に解析するため、短日と長日の脳を用いてRNA-seqを実施した。パッチクランプ法による電気活動記録、記録細胞への色素注入と免疫組織化学を組み合わせ、PLニューロンの電位記録及び染色法を確立した。そして、その形態からPL-aとPL-bニューロンの2タイプが区別された。 (B)ReMOT法ではメスの卵母細胞への卵黄蛋白質(Yp)取り込みを利用して、CAS蛋白質及びガイドRNAを取り込ませる。そこで、ルリキンバエのYpタグをGFPにつけて取り込み効率を調べた。羽化後2-4日においてYp-タグGFP、タグ無しGFP変わらず卵母細胞へ取り込まれることがわかった。体色変異体作出のためのガイドRNAを設計した。 (C)JHB3を定量するため重水素を用いてラベルしたJHB3- d3を内部標準として用いUPLC/MSMSにより測定する方法を検討した。羽化後7日目の長日個体など、高濃度のJHB3を測定することができた。今後、より低濃度が測定できるよう、システムを改良する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験Aでは形態学的解析、遺伝子発現解析やPLニューロンの電気活動記録法の確立が達成できた。実験Bのゲノム編集はメス成虫への注射方法などが確立できた。一方、実験CではJHの定量方法は利用機器を変更したこともあり、計画したところまで進めることができなかったが、それを除いてはおおむね順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
実験A:引き続き、DH31抗体、新規のPER抗体、バックフィルを用いて、DN細胞(PER陽性)とPL(DH31陽性)の位置関係を調べる。また、DH31とPDF抗体を用いて、神経接続の有無を調べる。本年度得たRNA-seqデータを解析し、長日および短日で発現の異なる遺伝子を探す。電気生理実験では、本年度確立した記録・染色方法を用い、PL-aとPL-bニューロンにおいて、その電気的性質を長日と短日で比較する。また、PL-a、PL-bニューロンがもつ神経ペプチドを探索する。候補ペプチドとして、sNPF, corazonin, FMRFa関連ペプチド、そして、引き続きDH31をターゲットとし、電位記録・染色後にこれらの抗体を用いて免疫組織化学を行う。 実験B:ゲノム編集に関しては、研究協力者との連携を進め、ターゲット遺伝子の最適化などにより好条件を見つけることと、系統化の作業を分担し、まず、体色変異系統の作成を効率よく進める。 実験C:JHの定量方法については、これまで大阪市立大学の機器を利用していたため、COVID-19の影響により中断してしまった。また、内部標準に用いていた重水素体JHの純度が低く、低濃度JHの定量に問題があった。これを解決するため、大阪大学内のUPLC/MSMSを用いたシステムを立ち上げる、また、連携研究者と協力し、重水素体JHの純度を上げることを検討する。これらにより、引き続き、DH31をはじめ、実験Bの電気生理実験後の免疫組織化学でターゲットとする神経ペプチドを用いて、JH合成に対する影響を調べる。
|