研究実績の概要 |
バックフィルによりpars lateralis (PL) ニューロンの細胞体を標識した後、PLの大型細胞を個別採取し、nested PCRを実施した。採取された細胞の71-83%に、period, timeless, clock, cycleの時計遺伝子の発現が確認された。また、29%の細胞にこれら遺伝子すべてが発現していた。神経ペプチドdh31, ipna, pdf, snpf, cz capaの発現も63-88%の細胞に見られた。免疫組織化学によりPL細胞を染色した結果、DH31とsNPFが共存し、PDFはこれらとは別のPL細胞にあることがわかった。電気活動記録と染色を行った結果、PLaタイプはすべて記録期間中に発火が見られなかった。一方、投射形態の異なるPLbタイプの約20%が発火していた。これらの発火パターンおよび細胞膜電位に、日長による違いは見られなかった。また、PLaのみがDH31に対し免疫陽性を示した。この細胞は、背側前大脳に両側性に枝を伸ばし、さらにアラタ体内部に細かく分枝していた。
ノックアウト個体の作製に向け、period遺伝子のシーケンスを行った結果、7つのexonとそれを挟むイントロン領域の配列を得た。また、PASドメイン内の領域をターゲットとする3種類のgRNAを設計した。
重水素を用いてラベルしたJHB3- d3を内部標準とするUPLC/MSMSを用いてJHB3を定量するための方法を検討した。また、アラタ体のJH合成の指標とするため、JH合成酵素の一つであるjhamt遺伝子のアラタ体での発現量を調べた。qPCRの結果、アラタ体のjhamt遺伝子の発現量は短日よりも長日で高かった。また、長日のアラタ体を神経ペプチドと一緒に培養した結果、DH31でjhamt発現量が減少した。一方、sNPFではjhamt発現量はコントロールと変わらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DN-PLニューロンの光周期による変化を調べる必要がある。このために、DH31免疫組織化学により、DN-PLニューロンのアラタ体内の分枝密度を短日と長日で比較する。 さらに、DN-PLニューロンのネットワークを調べるため、電気生理学的にsNPF, PDF, Glycineなどに対するDN-PLニューロンの応答を解析する。ゲノム編集に関しては、引き続き時計遺伝子ノックアウト個体の作製作業を進める。さらに、昨年度ほぼ確立したJH3 bisepoxide (JHB3)分泌量の微量測定をUPLC/MSMSのシステムで実施する。そして、アラタ体による単位時間当たりのJHB3分泌量を短日条件と長日条件で比較し、分泌量に対する神経ペプチド(DH31, sNPF)の効果を調べる。
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