研究実績の概要 |
ルリキンバエの羽化後3,7日の全脳RNA-Seqで得られたコンティグを223,145 個のクラスターに分類し、一日の4つの時刻(Zeitgeber time: ZT 0, 6, 12, 18; 明期開始ZT0)でTPM値を短日、長日条件間で比較した結果、合計153個のDEGが検出された。また、アミノ酸代謝経路、ビタミンと補因子の代謝経路、脂質代謝に関連する遺伝子に発現変動があることが示唆された。 短日条件で飼育した羽化後14日のハエの脳から、ZT 0, 6, 12, 18でPLニューロンの細胞体を採取し時計遺伝子の発現をSingle cell PCR法により解析した。その結果、periodの発現量に日内振動が見られ、ZT6で発現が有意に高くなった。一方timelessには顕著な発現振動が見られなかった。また、採取した全てのPLニューロンにおいて複数の時計遺伝子が発現していた。これらから、PLニューロンの一部は時計細胞として機能している可能性が示唆された。 アラタ体(CA)に発現する神経ペプチド受容体遺伝子を探索するため、羽化後7日のCAにおいて26種類の神経ペプチドの受容体遺伝子について定量的PCRあるいはnestedPCRを実施したところ、遺伝子発現が確認できたのはdh31rとsnpfrのみであった。これより、CAはPLニューロンが分泌するDH31とsNPFを受容すると考えられた。羽化後7日のJH3 bisepoxide (JHB3)分泌量をUPLC/MSMSで測定したところ、JHB3分泌量は短日よりも長日条件で有意に高かった。また、長日のCAによるJHB3分泌量はDH31とsNPFにより抑制され、その効果はDH31において著しかった。CAに投射する神経線維においてこれらペプチドの免疫組織化学を行ったところ、DH31、sNPFともに日長による神経投射密度に差は見られなかった。
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