海馬は記憶を形成する脳部位であるが、徐々に海馬で形成された記憶は大脳皮質に移動していくと考えられており、海馬と皮質の同期活動がそのメカニズムとして提唱されている。 海馬脳波活動測定と皮質間カルシウム活動の同時計測については、概ね予定通していた通りの研究を行えた。幸い、脳の2つの状態(シータ活動時と徐波活動)の両方で海馬と皮質間で強い活動相関が観測でき、他の論文でも報告があるsharp wave and ripples時の皮質活動以外に、シータ活動中の海馬と皮質全体の脳活動の相関性に関するデータも得られた。後者は技術的に難しいため、新たな知見が得られたことになる。また、豊かな環境飼育と隔離環境飼育での海馬―皮質活動の相関については、外部環境からの刺激が少ない隔離環境飼育の方が海馬―皮質活動相関が高くなるという意外な結果となった。この結果について学術誌に報告したが、大量の訂正をリバイズで要求されたため、未だに投稿に向けてデータ解析中である。リバイズ・ラボの引っ越しなどに時間がかかってしまったため、動物のタスク特異的な海馬―皮質協調活動の研究までは手が届かなかったのは残念であるが、さらに当研究を続けることで新たな報告を行いたい。
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