研究課題
本研究は、河川湖沼などにおける生食連鎖と腐食連鎖に集水域植生がどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。まず、東北地域の平地・山間部に代表的な18樹種の落葉を用い、栄養塩・有機物溶出実験を行ったところ、樹種により炭素、窒素、リンの溶出効率が大きく異なること、しかし、いずれの樹種でも溶出効率はリンが最も高く、次いで、炭素、窒素の順であることを明らかにした。また、様々な落葉からの栄養塩・有機物溶出液を用いて藻類成長実験を行い、栄養塩供給効率や鉄など微量元素供給能の測定を行った。その結果、溶出液での藻類の成長速度は、用いた落葉樹種により異なるものの、落葉からの窒素供給量におむね依存していた。さらに、殆どの樹種の落葉は、藻類が必要とする微量元素を供給していたが、コメツガなど一部樹種では微量元素供給能が不足していることが分かった。これら落葉樹種からの栄養塩・有機物供給が水圏生態系にどのような影響を及ぼすかを把握するため、落葉溶出物質を栄養起源としたマイクロコズム実験や動物プランクトン飼育実験を行った。このマイクロコズムは、藻類に加え、シアノバクテリア、細菌、菌類、原生動物など、自然条件下で生食連鎖と腐食連鎖に関わる生物群を用いて実施した。その結果、これら生物群の応答は、用いた落葉樹種に応じて特異的に異なることが明らかとなった。これら結果から、集水域の樹種により水圏の高次生産に果たす生食連鎖と腐食連鎖の相対的重要性が異なることが検証され、当初目的としていた課題解明を達成することが出来た。またこれら成果と関連した野外実験の成果やダム湖生物群集と集水域との関係を取りまとめるとともに、プランクトンの生態分類に関わる調査・実験も本研究の枠組の中で実施した。なお、得られた成果は、日本生態学会や日本陸水学会大会で口頭発表したほか、一部は英語論文として投稿し、他は投稿を準備している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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