研究課題/領域番号 |
20H03316
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小口 理一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任講師 (10632250)
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研究分担者 |
日浦 勉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70250496)
南光 一樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40588951)
高橋 俊一 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80620153)
牧野 能士 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20443442)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 順化能力 / 葉の厚さ / 光合成能力 / 種内変異 / 生態学 |
研究実績の概要 |
環境変動に対する生態系の応答が注目されるが、どのような植物がどこまで順化できるのかを正しく説明できる理論は未だ導かれていない。本研究では葉の厚さおよび光合成能力の順化能力が種内でどのように変異しているかを調べ、これらの順化能力に関連する形質・環境・遺伝子を明らかにしたい。材料には日本で最も優占する広葉樹種と針葉樹種であるブナとスギおよび、モデル植物のシロイヌナズナを用いている。ブナについては日本国内で緯度の異なる10サイトから集めた集団を生育する北海道大学苫小牧研究林共通圃場で5集団について、スギについては、同様に14サイトから集めた集団を生育する筑波大学に設けられた共通圃場で6集団について、被陰実験を行なっている。シロイヌナズナについては、世界各地で集められたエコタイプ種子をリソースセンターから取得し、人工気象機内の2つの生育光強度で共通圃場実験を行なっている。葉の厚さについては、レーザー変位計とアクチュエーターを利用した測定法を導入し、厚さの葉内分布の測定を可能とした。光合成能力については、他サンプル同時測定機を導入している。ブナでは葉脈のない部分の葉の厚さだけで比べると、低緯度由来ほど厚い傾向はあるものの、葉脈も含めて測定した厚さほどのエコタイプ間差は見られないことがわかってきた。1年間の被陰処理により、全エコタイプで葉の厚さは薄くなったが、現在のところ厚さの可塑性のエコタイプ間差は見られていない。現在までの結果は、低緯度由来のエコタイプは、高い気温と蒸散に耐えるために、葉サイズを小さくして、葉脈の太さと密度を高めている事を示唆している。スギについては、針葉断面の縦横比に集団間差があることを示唆する結果が、シロイヌナズナではエコタイプ間での葉の厚さの違い、光応答時の厚さの変化の違いが出始めており、各生育条件での葉の各形質や由来地の環境データとの関連等を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブナとスギについては、共通圃場での被陰実験が、ほぼ予定通り行うことができている。ただし、ブナについては、北海道大学苫小牧研究林内での鹿の個体数増加による食害の影響が出るなどして、対応を迫られたが、これまでのところ、被陰箱内に鹿が口を入れられないように工夫するなどして、食害の影響を抑えている。スギについては冬季の強風による被陰箱の倒壊が問題となったが、こちらは、風が逃げる構造に被陰箱の寒冷紗の貼り方を工夫することで対応している。新型コロナウイルスの影響で、実験補助の雇用が難しかったことで、研究代表者の測定に割かれる時間が増えたため、データの解析が遅れてはいるものの、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
野外共通圃場での被陰実験および、人工気象機での共通圃場実験については、予定通りに進めたい。新型コロナウイルスの影響がおさまり、実験補助が雇用できることを期待している。データ解析に割ける時間を増やして、解析を進めていきたい。
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