研究課題
昨年度、北海道の夏緑樹林において Archaeospora 属と多く共生する傾向が見られたキンポウゲ科およびイネ科の植物種を対象として、次世代シーケンシングによるアーバスキュラー菌根(AM)菌の DNA メタバーコーディング分析を行った。森林内だけでなく、林縁や空地など比較的開けた場所に生育する植物種の菌根を新たに多数の場所から採集し、(1)植物の科や生育環境により AM 菌群集の多様性や組成が異なるか、(2)開けた場所に生育するキンポウゲ科とイネ科植物も Archaeospora 属と共生する傾向が強いのかなどを検証した。その結果、AM菌群集の多様性と組成は、植物の科や生育環境によって有意に異なっていた。しかし、植物の科や生育環境に関わらず、多くの植物種が多様な属のAM菌と共生していたことから、同属のAM菌であっても菌種によってニッチが異なる(異なる環境を好む)ことが示唆された。また、落葉高木であるヤチダモ(モクセイ科)を対象として、生活史の初期過程における菌根共生の時間動態を明らかにすることを目的として、宮城県内で観察を実施した。これまでの研究により、ヤチダモの当年生実生は地上に出現してから約1ヶ月後までにはAM菌と共生を始め、約4ヶ月が経過した後でも菌根共生率は30%程度であること、感染率が成木(約55%)と同程度に達するまでには少なくとも1年を要しており、草原生植物や作物において行われてきた先行研究と比べて、菌根共生率の上昇が緩やかに進行していることが明らかとなった。
3: やや遅れている
COVID-19拡大による影響により野外調査において制約が生じたことや、次世代シーケンサーでの作業におけるエラーにより作業がやや遅れている。
次年度、遅れている作業を継続して行う。特に、菌根共生の時間動態については、複数の植物種を対象に観察と分析を実施する予定である。
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New Phytologist
巻: 234 ページ: 1112-1118
10.1111/nph.18049