研究課題
潜葉虫の多様性に関する網羅的調査を行い、コケ植物に潜孔するコケハモグリバエ類の多様性を世界で初めて明らかにした。コケ食昆虫にはこれまで、コバネガ類やシトネアブ類のように、中世代にコケ食になった、起源の古い種群もあるが、ハモグリバエ科はそれらと異なり、新生代以降に多様化した種群である。コケ植物に潜葉するハモグリバエ科は1種のみがフランスから記載されているのみであったが、本研究によって日本から39種のコケハモグリバエが発見され、それらはすべてPhytoliriomyza属に属し、そのうち37種は新種であった。コケハモグリバエ類では、胸部背面の色と模様と、オス交尾器の生殖弓の構造が特殊化・多様化しており、それらの形態で種の識別は容易であった。39種のうち、36種はタイ類を、3種はツノゴケ類を利用しており、それぞれ高い寄主特異性を持っていた。一方、一種のコケに複数種のハモグリバエが潜ることも稀ではなく、例えば、ジャゴケ属には15種、ゼニゴケ属には5種、ジンガサゴケには6種のハモグリバエ類が潜葉している。ゼニゴケは分子生物学のモデル生物になっているが、そのゼニゴケに2種のハモグリバエが潜孔していることも明らかになった。これらコケハモグリバエ類の分子系統解析を行ったところ、コケハモグリバエ類は、被子植物を利用する系統が始新世にコケ植物に寄主転換を起こし、その後、コケの属間・種間の寄主転換を繰り返して、多様化を遂げたことが明らかになった。潜葉性のタマムシ類の多様性の調査を行い、2新種(コバンモチヒラタチビタマムシ、オオバヤドリギヒラタチビタマムシ)を報告し、35種の寄主植物と潜孔様式を報告した。ハイノキ科の葉に潜孔する2種では、最初に中肋に潜孔し、落葉を誘導したのち、落葉中を潜孔するという習性が明らかになった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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