研究課題/領域番号 |
20H03324
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒井 章子 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (30361306)
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研究分担者 |
乾 陽子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (10343261)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 共生関係 |
研究実績の概要 |
細菌の16S rRNAをターゲットとした Amplicon Sequencingにより、アカメガシワの花微生物叢は雄花と雌花で大きく異なるが、年によっても優占する細菌には大きな変動があることがわかった。その一方で、主要な細菌のメンバーはその頻度は変化するものの、年に関わらず出現していた。花上の細菌について年々変動を扱った研究はほとんどなく、その要因はわからないが、先住者効果などが働いている可能性があると考えている。 雌花で出現するスフィンゴモナス細菌が植物の結実率などに影響を与えるかどうかを調べるために、培養した細菌を用いて接種実験を行った。結実率は接種を行わなかったコントロールも含め総じて高く、大きな変化は検出できなかった。一方、結実した種子の細菌叢を調べてみると、接種した樹木では組成や量が変化していることを示唆する結果を得た。今後、細菌の組成だけでなく、量も評価したいと考え、定量PCRのプライマーの検討も行い、全体量については評価法を確立できたので、次年度以降は量についても解析を進めていく。これまで農作物を対象に行われた研究で、花から細菌が植物体に入り、種子から垂直伝播し子植物の成長を促進したり、親植物の耐病性を向上させたりという報告がある。アカメガシワとスフィンゴモナス細菌の間にも、そのような関係があるかもしれない。 本年度中に関連論文2本が国際紙に受理された。また、2本が投稿中である。そのほか、日本生態学会ではシンポジウム「花と種子の微生物」を主催し、生態学会の内外から5名の研究者に講演をしていただいた。そのほか、ポスター発表や招待講演も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文を出版できたこと、また野外実験からサンプルの分析まで滞りなくすすめることできた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、分離・培養した雌花へのスフィンゴモナス細菌の接種により、結実率等は影響を受けないが、種子の微生物叢が影響を受けることが示唆された。そこで、接種がどのように種子内の微生物叢に影響を与えるのか、これまで行ったアンプリコンシーケンシングによる細菌叢解析に加え、以下の解析を行う。 (1)真菌の組成や細菌の量などに着目した解析:真菌の組成については、真菌をターゲットとしたITS1F_KYO1ーITS2 _KYO2領域のアンプリコンシーケンシングを行う。細菌量については、細菌全体あるいは接種した細菌の量を、定量PCRで評価する。全体量は、16S rRNAをターゲットとしたプライマー335Fー753Rで推定する。このプライマーは植物由来のクロロプラストやミトコンドリアをほとんど増幅しない。摂取した細菌については、プライマーを新たに設計して定量PCR用を行う。 (2)スフィンゴモナス細菌と植物の関係:スフィンゴモナス細菌が植物にどのような影響を与えるのか、とくに種子の生残や実生の成長を評価する。そのために、雌花にスフィンゴモナス細菌を接種し得られた種子の発芽や成長を、インキュベーターの制御された条件下、および野外で記録する。 (3)スフィンゴモナス細菌の種子への影響についての植物への特異性:他の植物の花に接種した場合にも、何らかの影響を与えるのか、栽培植物を用いた実験を行う。 これまでの研究成果について、日本生態学会で発表を行う。また、接種による細菌組成の変化については論文を執筆する。
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