本年度は、追加の分析を行うとともに、これまでのデータと合わせて、細菌組成と多様性の関係について解析を行った。主座標分析をもちいて種子細菌叢を解析すると、主座標分析の第一軸(18.3%を説明))はOTUの数と非常に強い相関が見られた。このことは、第一軸は、細菌叢の変異はよく見られる出現頻度の高い細菌のみが存在する多様性の低い種子と、出現頻度の低い細菌が多数含まれる多様性の高い種子を両極とした軸になっており、種子の細菌群集は入れ子状構造となっていることを示唆する。さらに、主座標分析の第一軸とスフィンゴモナス属を含むアルファプロテオバクテリアの占める割合とは正の、ベータプロテオバクテリアとは負の関係があることがわかった。 一方、16s rDNA領域をもちいた定量PCRで推定した細菌量と主座標分析の第一軸とは、有意ではなかったものの正の相関が見られた。また、出現頻度が高いOTU(コアOTU)のコピー数を推定し、細菌多様性が高い種子と低い種子で比較すると、細菌多様性が高い種子ではコアOTUの量が多い傾向が見られた。このことは、細菌多様性が高い種子では細菌間の競争がありそれぞれの量が減るのではなく、むしろ細菌の絶対量が多くなることによって、あるいは細菌の量を増やすような何らかの要因が、細菌の多様性にも正の効果を与えていることを示唆する。 また、経年観察による比較では、花微生物叢は雌雄ともに大きな年変動が見られたのに対し、種子微生物叢は比較的年変動が少なかった。このことは、種子の細菌叢の多くは、母植物に由来しており、母植物の細菌叢は花表面ほど大きく変動しないことを意味しているのかもしれない。
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