研究課題/領域番号 |
20H03326
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
源 利文 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (50450656)
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研究分担者 |
山中 裕樹 龍谷大学, 先端理工学部, 准教授 (60455227)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環境DNA / 環境RNA / 繁殖レジーム / コイ / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
(1)核およびミトコンドリア(mt)環境DNA(eDNA)を用いた特定種の繁殖レジームの把握手法の開発および野外における検証に関して、一昨年度に取得した三春ダムのデータを解析し、eDNAの繁殖行動のマーカーとしての利用可能性に関する論文を投稿した。実験池を用いた実験によって、コイの繁殖期マーカーの時空間的影響範囲を明らかにした。秋産卵のアユを対象とした繁殖行動を捉える技術開発の前に、春産卵のハスで予備検討を行ったが、精子カウントが失敗したため、アユの調査を見送った。精子等の「細胞膜が壊れていない健康な細胞」を狙ったeDNAの検出技術を開発し、ゼブラフィッシュの水槽水を対象に実施した成果を学術誌で発表した。 (2)核およびmtDNAのeDNAメタバーコーディングによる繁殖レジームの多種同時探索法の確立と野外適用について、核rRNA遺伝子上のプライマーを確立し、琵琶湖および周辺水域で有効性を確認した。琵琶湖淀川水系に生息するほぼ全てとなる67魚種を対象に、次世代シーケンサーによる同領域の配列決定を行い、65魚種において成功した。これらの配列データについては、データペーパーとして公表準備中である。 (3)環境中のRNA情報から繁殖レジームを把握する手法の開発について、昨年度実施したeRNA分解実験のデータを再解析し、学術誌に投稿した。各種のろ紙を用いてeRNA回収量を調べ、孔径0.45μmのろ紙でeDNAとRNAを同時回収できることを明らかにした。コイの実験も計画していたが、対象種を統一した方がより深い理解につながると考え、eRNA実験の対象はゼブラフィッシュに統一することとした。 (4)当初計画に即した研究の他に、タナゴ類の繁殖期推定、各種のeDNAメタバーコーディング手法の最適化、土壌からのeDNA抽出手法の確立、eDNA分析に関する基礎的知見の収集なども行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いずれの計画も順調である。項目(2)においてアユの野外での調査を見送ったが、項目(1)では当初計画で来年度に予定していた論文投稿などを前倒しして今年度中にできたため、総合的には概ね順調と判断された。
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今後の研究の推進方策 |
(1)核およびミトコンドリア(mt)環境DNA(eDNA)を用いた特定種の繁殖レジームの把握手法の開発および野外における検証に関して、コイの繁殖期マーカーの時空間的影響範囲に関する論文を投稿する。また、アユ等の産卵を把握する手法を野外でテストする。 (2)核およびmtDNAのeDNAメタバーコーディングによる繁殖レジームの多種同時探索法の確立と野外適用について、野外データの解析を行い、手法を確立する。リファレンス整備を継続する。 (3)環境中のRNA情報から繁殖レジームを把握する手法の開発について、環境RNAの効率的な回収法を確立するとともに、繁殖関連遺伝子およびストレス関連遺伝子の情報取得を目指す。 (4)関連技術のさらなる発展のための実験を行う。
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