(1)核およびミトコンドリア(mt)環境DNA(eDNA)を用いた特定種の繁殖レジームの把握手法の開発及び野外における検証に関し、昨年度までの成果をまとめて2編の論文を国際誌に投稿、出版した。 (2) 核およびmtDNAのeDNAメタバーコーディング(MB)による繁殖レジームの多種同時探索法の確立と野外適用について、琵琶湖や三春ダムに生息する魚類について、昨年度に作成した核ITS2領域を対象とするMBプライマーを用いて当該領域の配列決定を行った。これまでに配列決定した67種101個体に加え、新規の種17種48個体と、重複する種44種82個体についての情報を追加し、データ整備を進めた。また、三春ダムにおいて過年度に収集したサンプルを用いた定量MB法により、多種の繁殖レジームを同時に推定可能であることを示すことに成功し、成果を国際誌に投稿した。 (3)環境中のRNA情報から繁殖レジームを把握する手法の開発について、分析に供する濾紙試料の保存方法について検討した。RNAlaterを添加して-20℃で1週間保存した場合、未添加試料に比べて数十~数百倍濃度のRNAを回収することができた。また、魚類由来の環境RNAの分解速度について検証し、RNAとDNAの比較で明瞭な分解速度の差はないことを明らかにし、成果を国際誌に投稿、出版した。また、ゼブラフィッシュではマーカーの絞り込みが難航したため、トゲウオ類を対象として環境RNA分析による繁殖レジームの把握が可能か検証した。雄の腎臓で繁殖期に生産されるスピギン遺伝子を検出対象とし、繁殖期のトミヨの飼育水試料から抽出した環境RNA試料をPCRに供したところ、増幅が確認され、本手法の有効性が示唆された。 (4)当初計画に即した研究の他に、両生類のMB系の開発、eDNAに関する基本的知見の収集、eDNA MBによる魚類生態の情報収集法の開発なども行った。
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