研究課題/領域番号 |
20H03329
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研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
磯村 尚子 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 准教授 (90376989)
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研究分担者 |
安田 仁奈 宮崎大学, 農学部, 准教授 (00617251)
菅 浩伸 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (20294390)
中野 義勝 沖縄科学技術大学院大学, 沖縄マリンサイエンスサポートセクション, リサーチサポートリーダー (40457669)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サンゴの群落維持機構 / ユビエダハマサンゴ / 生物学と地質学 |
研究実績の概要 |
本研究では、白化に強く現存数が多いユビエダハマサンゴを対象に、「①ユビエダハマサンゴの大規模群落は、環境の激変をどの様にして乗り越えてきたのか? ②それを可能にした要因は何か?」を学術的な「問い」とし、沖縄周辺におけるユビエダハマサンゴ群落の局在を明らかにするとともに、各群落の生殖様式と遺伝的構造、地質学的な形成年代を調査し、群体や種レベルの白化耐性と集団維持機構との関連を明らかにすることを目的とする。 本年度は、沖縄県本部町瀬底島アンチ浜のユビエダハマサンゴ群落を対象とした。群落のサイズは300×25メートルであり、ほぼユビエダハマサンゴでのみ形成されていた。産卵時期である5月はコロナ禍で実験施設の利用制限があったため、予備的に13群体から枝の一部を採取し、水槽にて配偶子放出を確認した。その結果、雌が12群体、雄が1群体であり、性比の偏りが推測された。また、交配実験より、放出された配偶子の受精能が確認できた。 夏季には、対象群落にて(1)ボーリングによるコア採取、(2)群落全体を網羅するように40群体からの枝片採取、を行った。(1)からは、群落の下部には細砂・泥質堆積物で埋積されていたことから、この場所に最初に加入したのはユビエダハマサンゴであり、その後継続して群落を形成・維持してきたことが示唆された。なお、詳しい形成年代については、加速器質量分析装置を用いた14Cの定量分析により現在解析中である。(2)の枝片について遺伝子解析を行ったところ、群落を形成するユビエダハマサンゴには遺伝的に異なる2系統があることがわかった。また、解析した群体ではクローンはみられなかった。 以上から、ユビエダハマサンゴは最初に加入した場所に継続して生息していること(問①の一部に対応)、破片化ではなく有性生殖にて群落を広げてきたこと(問②の一部に対応)が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではユビエダハマサンゴ群落の維持機構と維持期間を生物学と地質学的手法から明らかにすることを目的としている。具体的には、1.異なる環境条件下で発達したユビエダハマサンゴの大規模群落の構造を明らかにし、2.地質学的な手法により1. の大規模群落がどの様な過程を経て今あるのかを明らかにする。さらに3.ユビエダハマサンゴの野外における性比と繁殖様式を解明し、4.大規模群落の遺伝的構造を明らかにする。 本年度は、コロナ禍による県間移動制限があったため、対象地域を1か所に絞って調査を行なわざるを得なかった。しかし、上記1から4について、効率的な手法の確立やその有効性の確認ができたことは大きな収穫であり、今後対象群落を増やした際に効率よくデータ収集ができると考える。また、性比の偏りや遺伝的に異なる2系統の存在など、当初予想していなかったことが明らかになった。これらを他の群落でも検証することで、設定した学術的問いに対して重要な知見となると予想される。さらに、他機関と協力して異なる2系統間での繁殖や生理活性の違いについての検証を進めており、初めに設定していたよりも多くの事象が明らかになっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、1.伊平屋島北部群落および2.中城湾群落を対象にする。これら2つについて、①ドローンによる空撮、②水面遊泳によるGPS測量、を用いて規模と構造の把握を行ない、各群落の地形地図を作成する。群落において、一番長い直線(長径)を形成する2地点を基点とする。2基点から中心に向かって5-10 m毎に地点を設置し、各地点で長径に直交する直線を設定する。その後地点毎に群体から枝片(15 ㎝程度)を採取する。対象2群落にて、最深部と最浅部、その中間深度3地点について自作のプッシュコアを用いて掘削コアを採取する。その後、放射性炭素等を用いて年代測定をする。 今年度の対象地域から採取した枝片(3㎝)を固定・脱灰後、組織切片を作成し組織学的に性比を検証する。前年度対象とした瀬底島アンチ浜群落の群体を用いて交配実験を行ない、受精能を確認する。その際、①遺伝子型、②精子濃度の2点と受精率との関連を検証する。 前年度対象にした瀬底島アンチ浜および石垣島周辺において、対象種にて隠蔽系統が確認された。これに基づき、再度枝片を採集して骨格標本を作成し、形態形質に違いがみられるかの確認を行なう。その後、形態形質と分子系統解析結果を統合し、隠蔽種であるかを明らかにする。今年度対象地域より採取した枝片について、DNA抽出後MIG-seq法を用いたSNPジェノタイピングにて、各群落内の遺伝的構造を検証する。さらに、前年度の結果も併せて、集団間のコネクティビティの程度を検証する。
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