研究課題/領域番号 |
20H03330
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
高橋 俊一 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80620153)
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研究分担者 |
波利井 佐紀 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (30334535)
丸山 真一朗 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (50712296)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 白化 / 共生 / 褐虫藻 / サンゴ |
研究実績の概要 |
海水温が異常に高くなると、サンゴは共生する褐虫藻(共生性の渦鞭毛藻)を失い白化する。白化直後のサンゴはまだ生きており、褐虫藻を再共生させることで回復する。しかし、その回復が遅れると、褐虫藻からの栄養が不足し、サンゴは死滅する。大規模白化により多くのサンゴが死滅していることからもわかるように、自然界では白化からの回復は容易ではない。その要因の一つが、高温ストレスによる褐虫藻の共生能力の喪失である。本研究課題では、高温ストレスを受けた褐虫藻が共生能力を喪失する現象に着目し、それが白化からの回復に与える影響を実験的に明らかにすることを目的とする。 モデル生物のイソギンチャクでは、(1)高温ストレスを受けた褐虫藻の共生能力が失われること、(2)その喪失は一時的であること、(3)褐虫藻種の違いで高温ストレス感受性が異なることを明らかにした。これは、2020年に、国際誌(The ISME Journal)に発表した。次に、サンゴ(Acropora tenuisとAcropora digitifera)を用いて実験を行った。実験には、褐虫藻を獲得する前のサンゴ幼ポリプを用いた。その結果、イソギンチャクでの実験同様、高温ストレスを受けた褐虫藻の共生能力の喪失が確認された。また、褐虫藻種の違いで、温度感受性が異なることも確認された。この結果は、高温ストレスによる褐虫藻の共生能力の喪失が、白化したサンゴの回復を抑制する原因となることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していたサンゴを用いた実験に関しては順調に進んでいる。ただ、高温ストレスを受けた褐虫藻が共生能力を喪失するメカニズムに関しては、実験に遅れが生じている。この原因は、研究代表(高橋)の所属変更に伴い、研究に必要な実験機器(蛍光実体顕微鏡)へのアクセスが悪くなったことにある。しかし、昨年末に、蛍光実体顕微鏡を研究室に導入したことにより、研究は再開されている。また、研究の遅れのもう一つの原因として、COV19により、共同研究者との共同研究が難しくなったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
高温ストレスによる共生能力喪失機構の解明に関しては、引き続き研究代表者(高橋)と分担者(丸山)が担当し、分子生物学・生理学・生化学の研究手法を用いて、研究進める。褐虫藻種間の異なる温度感受性機構の解明に関しては、研究代表(高橋)と分担者(丸山・波利井)が担当し、研究を行う。高温ストレスにより喪失した共生能力の回復機構の解明二関しては、研究代表者(高橋)と分担者(丸山)とで研究を進める。サンゴでの仮説の検証に関しては、研究代表者(高橋)と分担者(波利井)とで、琉球大学瀬底研究施設を利用し、サンゴを用いて研究を進める。得られた研究成果は、随時、学会発表の他、論文発表する。
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