研究課題/領域番号 |
20H03332
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
安達 登 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60282125)
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研究分担者 |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
神澤 秀明 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (80734912)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エミシ / 東北古代人 / 全ゲノム / 遺伝的変遷 |
研究実績の概要 |
縄文時代人の遺伝子研究は、これまでミトコンドリアDNAを中心におこなわれてきた。しかし近年では、技術の進歩に伴って核ゲノムが研究の中心になりつつある。これまで報告されている縄文時代人のゲノムデータには、中部地方以西のものがなかった。我々は、佐賀県佐賀市の東名遺跡から出土した縄文時代早期人骨(約7800年前)について遺伝子解析をおこない、ミトコンドリアゲノムの全体、および核ゲノムの一部を明らかにした。これは、中部地方以西の縄文時代人のゲノム情報に関する初めての報告である。 東名遺跡人骨のミトコンドリアDNAとY染色体のハプログループは、それぞれM7a1aの祖先型およびD1bであった。これらは、これまでに報告されている縄文時代人にみられるハプログループと類似していた。今回の東名人、北海道礼文島船泊遺跡人、および縄文時代最終期~弥生時代最初頭の愛知県田原市伊川津遺跡人の3個体の核ゲノムを比較した結果、日本列島内では縄文時代を通じて人々に遺伝的連続性があり、外来の人々との混血の明確な証拠は認められなかった。このことは、縄文時代人の遺伝的分化は、混血ではなく地域化の進行、即ち地域間の遺伝的交流が減少したことによって促進されたことを示している。今後、幅広い地域と年代をカバーする高品質な縄文ゲノムデータを蓄積することで、縄文時代人の遺伝子の地域的・時間的な差異と、外来の稲作農耕民との混血の歴史の詳細が明らかになることが期待される。この論文を含め、国内外の古人骨についての論文を合計14編報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の様に、東北古代人の遺伝的特徴およびその変遷を議論する上で欠かせない対照試料である縄文時代人、それも縄文早期という国内最古級の人骨のゲノムデータを論文報告することができた。さらに、核ゲノム解析として、新たに青森県東通村浜尻屋貝塚出土の中世人骨、山形県米沢市戸塚山137号墳出土女性人骨、山形県高畠町羽山古墳出土人骨、宮城県石巻市五松山洞窟遺跡出土古墳時代人骨の解析が現在順調に進行中である。よって、本研究の進捗状況は順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の浜尻屋貝塚出土中世人骨、戸塚山137号墳出土人骨、羽山古墳出土人骨、五松山洞窟遺跡出土古墳時代人骨についてはゲノムの数十%を既に決定できているので、論文として報告することを目指す。また、岩手県アバクチ洞窟遺跡出土弥生人骨のゲノムデータについても論文報告をおこなう予定である。
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