研究課題/領域番号 |
20H03335
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
小崎 智照 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (80380715)
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研究分担者 |
高雄 元晴 東海大学, 情報理工学部, 教授 (90408013)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 内因性光感受性網膜神経節細胞 / LED / 点滅光 / 概日リズム系 |
研究実績の概要 |
ヒトの概日リズム系への光による作用は内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell:ipRGC)が主な受容器として働いている。代表者の先行研究より点滅光は非点滅光よりもヒトの概日リズム系へ強く作用することを示唆している。動物の網膜を用いた分担者の先行研究よりipRGCは点滅光に対して同期した反応を示すことが報告されているが、ヒトの網膜電位からipRGCの反応を検討した先行研究は存在しない。ヒトの網膜電位にはipRGC以外の視細胞の電位も含まれており、網膜電位からipRGCの活動を評価できるのか不明である。瞳孔の対光反応など光による概日リズム系への作用には日内変動が存在することが知られており、これはipRGCの感受性の日内変動が関係していると考えらえている。本年度は点滅光に対する網膜電位の日内変動を検討した結果、ipRGCが主に反応する短波長の点滅光に対する網膜電位の振幅には大きな日内変動を確認した。これより短波長の点滅光に対する網膜電位にipRGCの活動が反映されていることが示唆された。次に分担者による本年度の実績として、視細胞層を欠失したマウス剥離網膜標本において長時間にわたりipRGCの光反応を記録する技術の開発を行なった。ipRGCは細胞体や樹状突起の表面に視物質様タンパク・メラノプシン(OPN4)を発現しphototransductionを行なっている。ipRGCの樹状突起野は網膜表面の面積にして500μmほどであることが免疫組織化学的研究によりわかっている。このため我々は電極の先端を工夫した金属電極を作成し、ほぼ単一かつ長時間にわたって細胞外から記録できる実験系を確立した。この実験系はippRGCからの電気記録に際し、優れた安定性と時間応答特性を有することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の代表者の結果より、異なる波長の点滅光に対するヒトの網膜電図に日内変動が確認され、点滅光に対する網膜電位からヒトのipRGCの活動を評価できる可能性が示された。また、分担者の結果より、これまでの研究で取り組まれてこなかった長時間にわたるipRGCの活動を細胞外から記録できる実験系を確立した。新型コロナウイルス感染症拡大による影響があったものの、本年度の成果については国内学会にて発表1件として報告しており、本研究の進捗は概ね予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
代表者の本年度の結果より、短波長の点滅光に対する網膜電位からヒトのipRGCの活動を評価できる可能性が示された。よって、今後の計画としては異なる周波数とデューティー比(1周期における点灯と消灯の時間割合)の点滅光に対する網膜電位よりヒトのipRGCの応答特性を検討する。また、分担者は長時間にわたるipRGCの活動を細胞外から記録できる実験系を本年度確立できたことから、次年度はipRGCの時間応答特性についてより詳細な解析を行うとともに、長時間安定して光反応を維持し続けることが可能か検討する。
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