本年度の研究実績として、まず代表者はヒトを対象として異なる周波数の点滅光に対する瞳孔径を測定した。その結果、内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell:以下、ipRGCとする)が反応しない赤色光に対しては非点滅光と各周波数(100Hz、250Hz、500Hz)の点滅光で瞳孔径の差は認められなかった。その反面、ipRGCが反応する青色光に対しては非点滅光よりも100Hz点滅光で有意な縮瞳が認められた。しかし、青色光でも250Hz以上の点滅光に対する瞳孔径は非点滅光に対する瞳孔径と有意差が得られなった。継続した光刺激に対する定常的な瞳孔径はipRGCにより制御されていることが知られている。よって、ipRGCは周波数250Hz以上の点滅光に対し同期して反応できないことが示唆された。また、分担者の実績としては、昨年度開発したmicroERG法を用いてマウス網膜からipRGCから1時間以上にわたって安定して光反応を記録できる手法を用いて、同細胞からフリッカー光源に対する光反応の安定性について検討を行った。その結果、数Hzの低頻度の点滅光のみならず30-40Hzといった比較的高頻度の点滅に対しても、最低でも30分間減衰することなく安定して反応し続けることがわかった。またこの光反応に関して、薬理学的な手法を用いて検討したところ、視細胞による影響は見られないことを確認した。これらの特異的な光反応特性は、ipRGCが網膜内において輝度検出器として機能するだけではなく、点滅光の時間特性についても安定して非イメージ形成視覚に関わる脳の神経核に情報を伝えていることを示していた。
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