研究課題
子供の時期の哺乳類脳の感覚神経回路の発達に、体内で自発的に発生する神経活動(自発神経活動)が重要な役割を担う。しかし、視覚系での研究は比較的進んでいるが、それ以外のモダリティーでの自発神経活動についてはわかっていないことが多い。研究代表者らは、これまでに新生仔マウスの一次体性感覚野にパッチワーク型の特徴的な時空間パターンをもつ自発神経活動の存在を明らかにし、さらに、それが、眼窩下神経よりも下流の末梢で発生し、視床皮質軸索を経由して大脳皮質に伝達されることを明らかにしていた。この新規の自発神経活動の発生機序を明らかにするために、前年度までにマウス体性感覚系末梢の三叉神経節のex vivo イメージングシステムを立ち上げ、新生仔マウスの三叉神経節の神経細胞が自発的に発火することを明らかにしていた。本年度はそのイメージングシステムを用いて、自発神経活動の性質の詳細な解析を行った。まず、三叉神経節の中でヒゲに投射する神経細胞の位置を同定する目的で、マウスの各列のひげにトレーサーを注入し、三叉神経節の中のヒゲ対応神経細胞の位置を特定した。このヒゲ対応領域に注目してex vivoイメージングを行い、神経細胞の発火パターンを解析した。発達段階を追って、生後0-1日齢、4-6日齢、14-16日齢、成体(60日齢以上)のマウスから摘出した三叉神経節でカルシウムイメージングを行い、さらに、別実験で得た成長に伴う三叉神経節の細胞密度の減少のデータで、発火頻度を補正した。その結果、生後2週間は三叉神経節の神経細胞は高頻度で発火するのに対し、成体ではほとんど発火しないことがわかった。すなわち、自発活動には幼若特異的であることが明らかになった。その他、三叉神経節で自発的に神経細胞が発火するメカニズムの解析、さらに、大脳皮質で見られる自発神経活動の時空間パターンが発生するメカニズムの解析を進めた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は前年度までに立ち上げたマウス三叉神経節のex vivoイメージングシステムを用いて、自発神経活動の解析を行い、三叉神経節の自発神経活動が発達期特異性であること等重要な性質を明らかにすることができた。また、体性感覚系末梢の神経細胞が自発的に発火する機序、および、大脳皮質で観察される自発活動の時空間パターンが発生するメカニズムの解析も順調に進んだ。一部の実験は想定どおりに進まないものもあったが、おおむね順調といえる。
引き続き、体性感覚系末梢である三叉神経節の神経細胞が自発的に発火するメカニズムの解析を行う。また、マウスの一次大脳皮質で観察される自発神経活動が示す特徴的な時空間パターンがいかにして発生するのかを解明するために、三叉神経節の自発神経活動の性質の詳細な解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件)
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