研究課題/領域番号 |
20H03349
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
内ヶ島 基政 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (10614662)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドーパミン / グルタミン酸 / 線条体 / 中型有棘ニューロン / スパイン |
研究実績の概要 |
動物やヒトは、どのような感覚情報や行動が報酬に結びつくのかを学習する(報酬学習)。線条体ニューロンは、感覚・運動情報をコードした大脳皮質からのグルタミン酸入力と、報酬情報をコードした中脳からのドーパミン (DA) 入力を受けるため、両者のシグナル統合が報酬学習の細胞基盤と想定されている。しかし、両者が時空間的にどのように統合されるのかは不明である。本研究は、新規分子標識技術を用いて、線条体中型有棘ニューロンにおけるドーパミンとグルタミン酸のシグナル統合過程を形態学的技術を用いて明らかにすることを目的とする。本年度は、DA放出部位を標識・操作するための技術開発を主に行った。具体的には、生体内ゲノム編集技術を用いて、DA放出に必要なアクアクティブゾーンタンパク質の遺伝子座に化学タグ配列と遺伝子組み替え酵素配列の同時ノックインを試みた。結果、Snap25遺伝子をターゲットにした場合、化学タグの標識シグナルは軸索上で断続的に分布することを確認した。一方、遺伝子組み換え酵素依存的な蛍光タンパク質発現を観察すると、化学タグ標識ニューロンに非選択的な蛍光タンパク質発現を認めた。以上の結果から、これまでに見出したゲノム編集条件によって、放出部位となるアクティブゾーンを標識することが可能になった一方、ゲノム編集に用いたドナーテンプレートからの遺伝子組み換え酵素のリーク発現の存在が示唆された。現在は、このリーク発現を抑える方策の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画通り、生体内ゲノム編集技術に基づいたDA放出部位の標識・操作技術の開発を行った。その結果、複数のアクティブゾーンタンパク質遺伝子の中からSnap25遺伝子に対するゲノム編集操作が放出部位の標識に有用であることを見い出すことができた一方、DA軸索の選択的な操作に必要な遺伝子組み換え酵素の発現に問題が認められたことから、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、上記で認められたゲノム編集非依存的な遺伝子組み換え酵素の発現を抑える方法の開発に取り組む。これに加え、線条体中型有棘ニューロンにおけるドーパミンとグルタミン酸の時空間的なシグナル統合過程を正確に評価するため、2光子グルタミン酸アンケージングを用いた中型有棘ニューロンの活動性マッピングの技術基盤の確立も目指す。
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