研究課題
神経細胞間の標的依存的なシナプス形成の分子機構の一つとして、シナプス前部誘導因子Ptprd遺伝子の持つマイクロエクソンの選択的スプライシングが重要な役割を担うことを見出した。マイクロエクソンにコードされるペプチドはPTPRDタンパク質とシナプス後部リガンドとの結合面に挿入されることで、シナプス結合の特異性や、分化誘導するシナプスの種類を調節することを明らかにした。さらに、Ptprd遺伝子のマイクロエクソンの取捨選択比率はマウス脳内において、脳部位や、発達時期、さらには環境要因に応じて厳密に決まっていることから、マイクロエクソンの取捨選択パターンの調節が脳神経回路発達と脳機能発現に極めて重要な役割を担うことが考えられた。Ptprd遺伝子マイクロエクソンの取捨選択パターン調節の生理的な重要性を明らかにするために、その取捨選択パターンを人為的に変化させるマウス系統の作出を試みた。特定のマイクロエクソンに終止コドンを導入したマウス系統を作出したが、このマウスではマイクロエクソンの選択比率は変化したものの総タンパク質量にも大きな変化が認められた。マイクロエクソンの上流イントロン内に存在する特定の配列をゲノム編集によって欠失したマウス系統を作出し、このヘテロ欠損変異体とホモ欠損変異体の脳内各部位のマイクロエクソンの選択比率を解析した。その結果、脳内各部位のPtprd遺伝子マイクロエクソンの選択比率がヘテロ欠損変異体では20~30%程度、ホモ欠損変異体では40%~70%減少することが確かめられた。この系統ではヘテロ欠損変異体およびホモ欠損変異体においてもPTPRD総タンパク質量には変化はなかった。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたPtprd遺伝子マイクロエクソンの選択比率を改変したマウス系統の作出に成功し、脳内の各部位の生化学的解析を完了したため。このマウスは全PTPRDタンパク量等に変化はなく、今後の解剖学的解析や行動解析に進めることが出来るため。
Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択比率を改変したマウス系統の解剖学的解析、行動解析を行い、マイクロエクソンの選択調節の神経回路発達と脳機能発現における重要性を検証する。
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