研究課題
前年度までに標的依存的なシナプス形成の分子機構の一つとして、シナプス前部誘導因子Ptprd遺伝子の持つマイクロエクソンの選択的スプライシングが重要な役割を担うことを見出していた。そこで、特に興奮性・抑制性シナプスの誘導バランスを調節するPtprd遺伝子マイクロエクソンの取捨選択を制御するイントロン性スプライシングエンハンサー (ISE) 配列を欠失したマウス系統 (Ptprd-dISE系統)を作出し、その生理的意義の解明を試みた。Ptprd-dISE系統のホモ変異体は、半数が生後まもなく死亡し、生存した個体も重篤な成長遅延が認められた。一方、ヘテロ変異体は大きな成長遅延は認められなかった。 ホモ変異体ではPtprd遺伝子マイクロエクソンの選択比率が野生型に比して40~80%低下し、ヘテロ変異体では10~30%低下していた。ホモ変異体、ヘテロ変異体のいずれもPTPRDタンパク質の総量には同腹野生型との間に変化は認められなかった。また、ホモ変異体、ヘテロ変異体のいずれも興奮性、抑制性シナプス誘導のバランス変化が認められた。ヘテロPtprd-dISE変異体を用いて、行動バッテリー試験を行ったところ、不安様行動の亢進、社会性の低下、自発運動の減少、抗うつ行動の亢進、感覚鈍磨などの解析したほぼ全ての行動指標に異常が認められた。一方、Ptprd遺伝子マイクロエクソンの選択比率に変化がなく、PTPRDタンパク質総量のみが半減したPtprd遺伝子ヘテロ欠損マウスでは大きな行動異常は認められなかった。このことからPtprd遺伝子マイクロエクソンの取捨選択パターンの調節が神経回路発達と行動制御に重要な役割を担うことが示された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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生体の科学
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