感覚入力は神経回路の形成と機能発現に重要であるが、その分子機構は不明な点が多い。本研究は、社会性行動との関連が深いマウス嗅覚系をモデルに、匂い入力が遺伝子発現を介して神経回路の発達・機能を制御するメカニズムの解明を目指した。網羅的遺伝子発現解析により、匂い入力は発達段階に応じて異なる遺伝子セットの発現を誘導し、それが嗅球神経回路の構造・機能の発達基盤となることが示唆された。また、発達段階に関わらず、匂い入力に依存して発現変動する遺伝子群には恐怖行動の制御に関わる遺伝子が多く含まれていたことから、これらの遺伝子を介して匂い情報に意味づけがなされ、社会性行動の制御に寄与している可能性が示唆された。
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