研究課題/領域番号 |
20H03358
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
橋本谷 祐輝 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (50401906)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乳頭体上核 / 歯状回 / 顆粒細胞 / 長期増強 / シナプス可塑性 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、乳頭体上核―顆粒細胞シナプスにおけるシナプス可塑性のメカニズムを調べた。このシナプスでは顆粒細胞に脱分極刺激を与えると乳頭体上核からの興奮性入力において長期増強が誘導されることを昨年明らかにした。より生理的な刺激条件でも長期増強が誘導されるか調べた結果、高頻度のバースト状の発火を顆粒細胞に与えると脱分極刺激と同様に長期増強が誘導されることがわかった。またさらに分子メカニズムを調べた結果、NMDA受容体は必要ではなく、シナプス後部のCaMKIIの活性が必須であることがわかった。さらにAMPA受容体のシナプス後部への移行によってLTPが引き起こされることがわかった。 この長期増強のシナプス特異性を調べるために顆粒細胞に入力する別の線維である、貫通線維の可塑性を調べた結果、貫通線維では脱分極刺激によって長期増強が起こらなかった。さらに乳頭体上核―抑制性ニューロン間のシナプスにおいても調べたところ、やはり長期増強は起こらなかった。最後にCA2への投射に関しても解析した。先行研究での報告のとおり、CA2の錐体細胞に乳頭体上核が興奮性の投射をすることを確認した。そこで記録しているCA2の錐体細胞に脱分極刺激を与えたが長期増強は誘導されなかった。 以上の結果から乳頭体上核―顆粒細胞シナプスで誘導される脱分極誘導性の長期増強はこのシナプスに特異的に引き起こされる現象であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度明らかにした乳頭体上核―顆粒細胞シナプスにおける長期増強に関して本年度はそのメカニズムを詳しく調べることができた。1)顆粒細胞の発火でも誘導できることを明らかにした。2)NMDA受容体非依存的であり、シナプス後部のCaMKIIが必須であることを明らかにした。3)シナプス入力特異性があり、抑制性ニューロンやCA2錐体細胞では誘導されないことがわかった。以上の成果により、本研究課題は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
乳頭体上核―顆粒細胞シナプスにおける長期増強に関して、さらに詳しくメカニズムを調べる予定である。特に脱分極からCaMKII、さらにAMPA受容体の膜への移行を繋ぐ分子メカニズムを調べる。また顆粒細胞の脱分極を誘導するような入力が生理的に起こり得るのかどうか検証する必要がある。
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