研究課題
トップダウン投射解析では、二次運動野(M2)から一次運動野(M1)へ投射する5層IT細胞が、M1の1層に強く投射し、転写因子ER81を発現するものと、1層にはあまり軸索を伸ばさず、ER81を発現しないものから成ることが分かった。M2の5層はM1だけでなく、一次体性感覚皮質(S1)、聴覚皮質、嗅周皮質にも投射する。そこで、S1、聴覚皮質、嗅周皮質に逆行性トレーサーを適用して、M2の5層IT細胞(転写因子Ctip2陰性)の皮質間投射先とER81発現の関係を調べた。S1投射細胞はM1投射細胞と同様に、6割程がER81陽性だったのに対して、聴覚皮質・嗅周皮質投射細胞の多くがER81陽性だった。体性感覚皮質投射細胞でも、その1層投射細胞の殆どがER81陽性だった。皮質間投射を同定した細胞をホールセル記録で調べると、5層IT細胞のサブタイプである嗅周皮質投射細胞はIT細胞より入力抵抗が低く、IT細胞間よりシナプス結合確率が高かった。M2の5層IT細胞は1層投射が強く、遠隔皮質まで投射するER81陽性細胞と、1層にあまり投射せず、M1やS1によく投射するER81陰性細胞のサブネットワークから成ることが分かった。マウスの巧緻運動学習では、新生したスパインの学習に伴う形態変化を解析した結果、皮質入力スパインは存続したものでも、頭部が縮小する傾向があったのに対して、視床入力スパインは増大することが分かった。また、学習形成に必要なM2からの皮質入力を、学習後に化学遺伝学的に抑制しても習熟した動作に影響を与えなかったのに対して、視床入力を抑制すると学習した運動が阻害された。これらの結果から、巧緻運動学習にはM2からM1へのトップダウン投射の一時的改変によって、視床からM1への入力の再編の仕方が決まり、学習記憶は新生・存続した視床入力スパインによって伝えられると考えられた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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