研究課題/領域番号 |
20H03361
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長瀬 博 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授 (70383651)
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研究分担者 |
斉藤 毅 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (80609933)
南雲 康行 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (00459661)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オレキシン1受容体 / アゴニスト |
研究実績の概要 |
本研究は、世界初のオレキシン1受容体作動薬の創製から薬理学研究までを一貫して実施し、オレキシン1受容体の機能解明を目指すものである。 初年度は、独自に見出したOX1/2R dual作動薬AとOX1R選択的作動薬Bを基盤として、構造類似性に着目してハイブリッド分子 C を設計、合成し、in vitroにてOX1/2R作動活性を評価した。その結果、CはOX2Rにも活性を示すものの、OX1Rに対し26 nMで作動活性を示すことを明らかにした。ハイブリッド分子Cは、1-aminotetralin構造上に不斉点を有するため、真に活性を示すユートマーとすることでさらに2倍程度の活性向上が見込まれた。そこで、光学活性な(+)-および(-)-Cを合成し、in vitro活性評価を実施したところ、(+)体がユートマーであることを見出した。 1-aminotetralinが強いOX1R活性の発現に有望な骨格であることが判明したため、続いてスルホンアミド部位を種々変換した誘導体を合成し、評価を行った。その結果、ベンゼンスルホンアミドを異なる複素環へと変換することで、OX2Rには活性をほとんど示さず、OX1R特異的に作動活性を示す誘導体Dを見出すに至った。 OX1R選択的作動薬Dを見出すことに成功したため、続いてOX1Rの薬理効果を検討した。げっ歯類にオレキシンを脳室内投与すると鎮痛効果を誘導する。そこでOX1R作動薬Dを用いて、鎮痛効果がOX1R 活性化によるものかを tail-flick式鎮痛試験で検討した。作動薬Dを30 μg および 100 μg/mouseでマウスに脳室内処置したところ、投与用量依存的な鎮痛効果の発現が認められ、この効果は OX1R ノックアウトマウスで有意に減弱した。これらの結果から、オレキシン誘発鎮痛効果の発現には、OX1Rの活性化が重要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、計画に従った分子設計により13.5 nMでOX1Rに作動活性を示すdual作動薬 (+)-CならびにOX1R選択的作動薬Dを見出すに至っており、いずれも世界初のOX1R作動薬である。また、OX1R選択的作動薬の薬理評価はすでに進行しており、当初の計画以上の進展を実現することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に見出したOX1/2R dual作動薬 C とOX1R選択的作動薬 D を基盤として、活性の向上、動態の改善に焦点を当てた誘導最適化研究を実施する。OX1R選択的作動薬 D については、in vivoでのOX1R固有の作用が確認されたため、本年度は精神症状や睡眠覚醒への影響を検討する。精神症状の評価にはオープンフィールド試験や社会行動性試験を用い、また睡眠覚醒は脳波筋電図測定を用いて評価する。また、並行してOX1R の活性化は報酬・欲求の情動にも影響することから、条件付け場所嗜好性試験でその効果を評価する。
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