研究課題
本研究は、世界初のオレキシン1受容体作動薬の創製から薬理学研究までを一貫して実施し、オレキシン1受容体の機能解明を目指すものである。 初年度にて新たにOX1/2R dual作動薬 C を見出し、続くスルホンアミド部位を変換することでOX1Rに選択性を示す作動薬 D を見出している。本年度は、OX1R選択的作動薬 D の更なる誘導化と作動薬 D を用いるin vivo薬理評価を実施した。【作動薬 D の誘導化】作動薬 D は水への溶解性が低いことから、塩化可能部位の導入による水溶性向上を試みた。その結果。新たに水溶性誘導体 E を見出すことに成功し、関連誘導体の水溶性向上の基礎的知見を得ることができた。また、作動薬 D は弱いながらもOX2R作動活性が残っていたため、選択性向上に主眼を置いた誘導化を行った。その結果、作動薬 D のスルホンアミド基上の芳香環部位に注目した変換を行うことで、OX2Rには活性を示さず、OX1R特異的に作動活性を示す新たな構造の取得に成功した。その後、末端に存在するアミド基上の置換基の検討を行うことで、268nMでOX1R選択的作動活性を示す誘導体 F を見出すに至った。【作動薬 D を用いるin vivo薬理評価】初年度はOX1R 作動薬 D の脳室内投与によるOX1Rを介する鎮痛効果を検証したため、本年度は末梢投与による鎮痛効果を調査した。マウスに作動薬 D を皮下投与し、酢酸ライジング試験により鎮痛効果を調べたところ、作動薬 D を30 mg/kgすることで鎮痛傾向が確認された。また、OX1R の活性化は報酬・欲求の情動にも影響することから、条件付け場所嗜好性試験も実施し、作動薬 D は用量依存的に嗜好性を示すことを見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、初年度に見出したOX1R選択的作動薬 D を基盤とする誘導化研究を実施し、作動薬 D の課題であった水溶性を向上させる誘導体 E ならびに弱いながらも残存していたOX2R作動活性を分離した新たなOX1R選択的作動薬 F を見出すことに成功している。また、作動薬 D を用いるOX1Rの機能調査に向けた薬理評価も順調に進行しており、当初の計画以上の進展を実現することに成功している。
本年度に見出したOX1R選択的作動薬 F は高い受容体選択性を有するものの作動薬 D と比較して活性が弱いため、作動薬 F を基盤として、更なる活性の向上に焦点を当てた誘導最適化研究を実施する。また、先行する作動薬 D を用いる薬理評価を継続するとともに、作動薬 F を用いる薬理評価も実施する予定である。
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Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
巻: 60 ページ: 128555~128555
10.1016/j.bmcl.2022.128555
巻: 59 ページ: 128530~128530
10.1016/j.bmcl.2022.128530