研究課題/領域番号 |
20H03371
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
柴崎 正勝 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 所長 (30112767)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 触媒的不斉合成 |
研究実績の概要 |
ごく少量の不斉源により大量の目的化合物の分子骨格を化学的かつ光学的に純粋に構築できる触媒的不斉反応は、立体制御が必須な医薬品合成において理想的かつ強力なテクノロジーである。本研究の目的は、複数の触媒機能を同時発現する協奏機能型触媒による革新的な触媒的不斉炭素-炭素結合形成反応の開発と、その重要医薬品群の実践的短工程不斉合成への応用である。これまで低反応性ゆえに触媒反応開発において顧みられてこなかったアミドやニトリルといった基質について、多くのエネルギー・活性化試薬の過剰投入による反応開発スタイルからの脱却を図り、協奏機能型触媒を駆使する無駄のない実践的合成法の地球環境上・産業上のアドバンテージを示していく。 アミドを基質とする系では、7-アザインドリンアミドを反応プラットフォームとする触媒的不斉合成に進展が見られた。これまでカチオンとアニオンを反応活性種とする2電子系の化学に極めて有効な協奏機能型触媒を見出していたが、この触媒系が光照射によって発生させた1電子系活性種であるラジカルを用いる高選択的なアミドへの共役付加にも有効であることを見出した。本手法は生理活性物質であるγ-アミノ酪酸誘導体の効率的合成法を提供する。 一方ニトリルを基質とする系では、独自に設計したニッケルを中心金属とするピンサー型錯体がニトリル基の活性化に有効であることを示すことができた。アセトニトリルは安価で大量入手可能な溶媒であるが、そのα位酸性度の低さから炭素求核剤としての触媒反応における利用はほとんど開拓されてこなかった。今年度は新規触媒がアセトニトリルを求核種とするアルドール型反応に有用であることを見出し、これまで中程度のエナンチオ選択性に留まっていた本反応において初めて95%を超える不斉収率を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミド及びニトリルを基質とした触媒的不斉反応の開発において進捗が見られているため
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに得られた7-アザインドリンアミドを反応プラットフォームとする触媒的不斉光化学反応、及びキラルピンサー型錯体を触媒として用いるアセトニトリルを炭素求核剤とするアルドール型反応に関する知見を深化させていく。 前者は光化学に特有な求核型活性種へと適用していくことで協奏機能型触媒の有用性を示していく。後者では中心金属・不斉環境のさらなる最適化によって基質一般性を拡充し、アセトニトリルを安価で大量入手可能な炭素求核剤として広く認知させることを目指す。
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